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2019プレミア12総決算

プレミア12 スーパーラウンドREVIEW

 

三走の周東佑京がタッチをかいくぐり、同点に追いつく


日本3×2オーストラリア 敵をあざむくにはまず味方から


 まさか、ここでバントとは。虚を突かれたのはオーストラリアだけではなく、侍ジャパンベンチも同じだった。1点を追う7回。先頭の吉田正尚が出塁すると、日本ベンチはすかさず周東佑京を代走で起用。その周東は「走るつもりで集中していた」と相手バッテリーを観察すると、浅村栄斗が三振に倒れる間に二盗、さらに二死後、源田壮亮の打席では三塁を陥れた。これを打席で見ていた源田は頭をフル回転させる。「三塁手が下がっているのが見えました。打って出るのと、バントと、どちらの確率が高いか」と直後の4球目を投前にセーフティーバント。

1点を追う7回、二死三塁から源田壮亮が意表を突くセーフティーバント


「バントは考えもしなかった」と言う周東だが、打球を処理したウィルキンズのタッチを難なくかわし、同点のホームを踏んだ。8回には押し出しで決勝点を得ているが、遠かった同点の1点を、稲葉監督が「切り札」と言う周東の足、そして味方をもあざむいた源田の閃(ひらめ)きで奪ったことがこの試合のすべてだった。

8回にマウンドに登り、三者凡退に抑えて直後の逆転劇へ、リズムを生んだ4番手・甲斐野央


日本3×4アメリカ 追いかける展開で欠いたもの


 先発で4回2失点のアンダースロー・高橋礼へのアジャストには「初見であそこまで対応するとは……」と稲葉篤紀監督は驚いたが、それでも4失点で踏ん張った投手陣を責めることはできない。敗因はアメリカの予告先発変更という不測の事態に対応し切れず、小刻みな継投の前につながりを欠いた打線にある。変更されたマーフィーは右サイドの変則タイプ。3回で降板するまでに3つの四球を選んだのみで、この間に2点を先制され、流れを失った。

今大会2度目の先発となった高橋礼だが、制球が甘く、4回4安打2失点とやや精彩を欠いた


 常に追いかける展開の中で、これまで大切にしてきたつなぎの意識が欠如。例えば、2点を追う4回一死三塁の場面では、アメリカは前進守備ではなく通常の守備隊形。ゴロを転がせば1点という状況も、吉田正尚はいとも簡単に浅い左飛を打ち上げた。7回一死二、三塁でも同様の状況だったが、山田哲人は左飛。1点差で敗戦は結果論だが、「コツコツと1点を積み上げていく」のが日本が目指すべき攻撃ではなかったか。

自らの間合いを保って3安打3打点と気を吐いた浅村栄斗。打席での意識が対外国のヒントに


6回、左中間最深部を襲うロッカーの打球をフェンスに激突しながら中堅・丸佳浩が好捕する


日本3×1メキシコ ついに見せた理想の形


初回に安打で出塁し、先制のホームを踏んでいた坂本勇人が2回には適時打。この日は3安打と当たりが出た


 苦戦を強いられたベネズエラ戦、オーストラリア戦、アメリカ戦と、いずれも日本は先制を許して追いかける展開を強いられていたが、この日はメキシコ先発の左腕・ラミレス攻略へ右打者を7人起用するなど大胆にシャッフルした打順変更が奏功。欲しかった先制点を手にした。初回、二死二塁から四番・鈴木誠也の中前打で先制すると、ここから3連打でもう1点を加点。2回には坂本勇人が左前へ適時打。結果的に打線はこの3点にとどまったが、「まず先制点を取れたというところでチームの流れになっていき、日本らしいわれわれの勝ち方につながった」と稲葉監督が話したように、序盤の援護が投手陣の完ぺきなパフォーマンスにつながっていく。先発の今永昇太が本塁打1本を許しただけで、後を継いだ3人のリリーフは被安打ゼロ。早い段階で先制点を奪い、強力な投手陣で守り抜く。追加点が奪えなかったことに課題はあるが、日本が理想とする勝ち方だった。

先発の今永昇太は6回を本塁打による1点のみに抑える好投を見せた


四番に座る鈴木誠也はここまで全試合安打で3度目のマルチと好調をキープ


日本10×8韓国 決勝前夜実り多き“消化試合”


2回、菊池涼介の左前打で二塁から生還した會澤翼


 決勝進出を決めているチーム同士による一戦は、“消化試合”に等しかったが、稲葉篤紀監督は目の前の勝利にこだわるよう呼びかけつつ、タイトル獲得に向けて準備も怠らなかった。韓国がメンバーを落とした一方で、日本はベストメンバーを立て、「雑に行かないでおこうと。送るところはしっかり送り、進塁打を打たせたりもしました。やりたいことはやれたと思います」。例えば6点を奪った3回には、無死二塁で三番・丸佳浩にバントを指示し、一死一、三塁から代走の外崎修汰には盗塁を試みさせるなど、積極的に動いた。野手は15人全員を起用しつつ、以降も2度の犠打に盗塁、四球を絡めて1点を奪いに行く本来の野球を徹底。一方、バッテリーは8点を失ったが、あえてデータを収集したことによるところが大きい。加えて2点差の8回には、これまで勝ちパターンで登板してきた甲斐野央、山本由伸山崎康晃らを温存。決勝へ向け、実りの多い一戦となったと言える。

ここまで打率1割台の山田哲人だったが、この日は2本の二塁打と復調気配


今大会初先発となった岸孝之は4回6失点。配球を會澤に任せ、決勝に向けデータ収集に協力した

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