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セイバーメトリクス解析 Data Analysis

千賀滉大がストライクゾーンで勝負しても優位に立てる理由

 

インタビューに続いて、ここではセイバーメトリクスの観点から鷹のエースの力を徹底解析。これまでとは明らかに違うピッチングスタイルの“大きな変化”とは?
データ解析・文=DELTA 写真=BBM


過去のシーズンとは違うマウンドでの攻め方


 今シーズンの千賀滉大は投球回を自己最高の180回1/3に乗せているが、防御率や被打率から奪三振や与四球、被本塁打などを絡めたセイバーメトリクス系の主要指標の多くは過去に記録した成績のレンジに収まっている。

 これだけを見ると持てる実力を安定的に発揮したシーズンというとらえ方もでき、何かが劇的に変わった感じには見えないかもしれない【表1】。


 しかし、一歩踏み込み「投げていたボール」に着目した指標を見ていくと“大きな変化”が確認できる。例えば「全投球のうちストライクゾーンに投じた投球の割合」は、この4年間で最も高い数値だったことが分かる。初球に投じたボールがストライクゾーンに入った割合も同様に大きく高まっている。


 一方、ストライクゾーンにボールを投げた際にバッターがスイングしそれがコンタクトされる割合は下がっている【表2】。つまり、今シーズンの千賀はストライクゾーンへの投球をかなり増やしながらも、そこで空振りも増やしていたことが見て取れる。


 どのようにしてこうした投球が可能になっていたのかは球種ごとの割合や球速を見ると分かりやすい【表3】。今シーズンの千賀はストレートの球速がアップし、見逃されるとボールの確率も高いスライダーとフォークボールの割合は下がり、それらのボールより曲がりが小さいカットボールやツーシームの割合を高めている(カットボールは球速も上昇)。千賀のストライクゾーンでの優勢は、球速を上げ威力を増したストレート、そしてゾーン内に投げ込んでいるとみられるカットボールにより生まれていたとセイバーの観点では予想される。

 ゾーン内での勝負を積極果敢に志向する目的としては球数削減、投球回数の制限への対応といったあたりが予想されるが、将来的に挑戦を視野に入れていると言われているメジャーのトレンドを意識した転換である可能性もある。このあたりは、またいつか本人の言葉に耳を傾けたいところではある。
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