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2019プロ野球記録集計号

二番・坂本勇、三番・丸でG打線は機能したか?5年ぶりV奪回に“初回”の攻撃あり

 

原辰徳監督が現場復帰(3度目の指揮)し、5年ぶりにセ・リーグの王者に返り咲いた。開幕前から注目を集めた二番に坂本勇人、三番に丸佳浩を据える超攻撃的オーダーは機能したのか?2人の成績を振り返りつつ、2019年の巨人V打線の秘密に迫る。


初回得点試合は貯金16 サカマル先制打は計25


 巨人が5年ぶり37度目のリーグ優勝を果たした背景には、過去4年、貧打に泣いた打線のV字回復があった。原辰徳監督が注目したのが上位打線の組み合わせ。V奪回の秘密を探るには、まず指揮官の思惑を整理するところから始める必要がある。

 昨秋の監督就任(復帰)直後に原監督が明かしたのは、「二番にチームの最強打者を置く」プランで、その候補として坂本勇人、丸佳浩の名前を挙げた。MLBではすでに主流となっているいわゆる“二番最強説”と呼ばれるもので、日本で従来考えられてきたバントがうまく、小技がきくタイプの打者を置くのとは異なる。三番タイプの坂本勇、丸を置くことで、一番打者が出塁すれば判を押したようにバントをするのではなく、まずは長打で先制点をうかがい、さらに後続のクリーンアップで更なる得点を狙う超攻撃的なプランだ。

「一番が出塁しているのに、相手に1つのアウトを献上するのはどうか。2019年のジャイアンツは、初回に2点以上を取る攻撃を目指します」(原監督)

 今春のキャンプ、オープン戦ではまず丸が二番に座り、坂本勇が三番を打ったが、一番に左打ちの吉川尚輝が起用されることが決まり、キャンプ終盤に二番・坂本勇、三番・丸で固定。結果的にこの並びが、成功を引き寄せることとなる。

 坂本勇は吉川尚の離脱などチーム事情もあり一番で16試合、三番で3試合、四番で5試合もあったが、二番で117試合に座った。丸は二番を打った試合もあるが(18試合)、三番で123試合に先発出場。二番・坂本勇―三番・丸が116試合ある。この2人が並ぶことで原監督の思惑どおりに増えたのが初回の得点だ。

 15年より昨季まで右肩上がりに増えているのは、この間、三番に座ることが多かった坂本勇の打撃成績の高いレベルでの安定化と重なるが、今季は昨年より22点の大幅増で、イニング別得点は初回の96点が最多。ほか11球団と比較しても初回の得点は巨人が最も多い。ちなみに、球団史上ワーストの4年連続V逸中は、初回に得点したのが15年=36試合、16年=35試合、17年=36試合、18年=42試合だったのに対し、今季は53試合とこちらも大幅増だ。

 初回に得点した試合は34勝18敗1分けで貯金16、初回0点は借金3だから、いかに先制点が勝敗に与える影響が大きいか、一目瞭然だろう。この中で原監督の目指した「初回に2点以上」は27試合あり、21勝6敗。このうち、3点以上を奪ったのは9試合でこちらは全勝だ。

 初回のサカマルの働きも見逃せない。イニング別打率を見ると、坂本勇、丸ともに.298と3割に迫る打率で、これは吉川尚の代わりに一番に座った亀井善行の.365に次ぐチーム2位の好成績(亀井が高打率を残したことも初回得点に大きく寄与していることを忘れてはならない)。また、ともに前半戦(1〜5回)の打率が3割超で合わせて112点をたたき出しているのも注目ポイントで、先制打は2人で25本(つまり25試合分。四番・岡本和真の12本を合わせれば37本)だ。殊勲安打はリーグ全体でも坂本勇2位(優勝決定時点では1位)、丸5位タイと、勝負強さを発揮。そんな2人が日本シリーズでは1安打ずつだから、4連敗も当然だった。



はみ出し記録MEMO 坂本勇人は球史に残る遊撃手


 守備の負担が大きいショートは、過去、打力よりも守備力が優先されることが多く、強打のショートは今も貴重な存在だ。プロ入り4年目の2010年に31本塁打を放っている坂本だが、シーズン30本塁打を記録したのは、10年の坂本勇を含めてわずか13例で、延べ5人しか存在しない。これが3割&30本塁打となると、下表のようにわずか5例で延べ4人と極端に少なくなる。なお、この長いプロ野球の歴史で、40本塁打はもちろん、3割&40本塁打は坂本勇が今季記録した1例だけ。球史に残る遊撃手となったのである。

坂本勇人

一番=16試合 丸佳浩

二番=18試合 三番=123試合
■2019年打撃成績: 143試合156安打27本塁打89打点12盗塁、打率.292


PROFILE
さかもと・はやと●1988年12月14日生まれ。兵庫県出身。右投右打。[甲]光星学院高―巨人07(1)

まる・よしひろ●1989年4月11日生まれ。千葉県出身。右投左打。[甲]千葉経大付高―広島08(3)―巨人19

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