週刊ベースボールONLINE

変化する日米移籍事情!

MLBのチーム編成に異変。助っ人の獲得状況にも大影響!中堅メジャー・リーガーが日本でプレーをする時代へ!?

 

その年のワールド・シリーズで大活躍したメジャー・リーガーが翌年に日本でプレーしたことがあっただろうか!? 最近、メジャー30球団のチーム編成が大きく変化している。その影響で、中堅クラスのメジャー・リーガーたちがプレーする場所を求めNPBのチームと契約している。最新の日米移籍事情を探る。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images

ナショナルズ初の世界一に貢献したパーラは、来季の年俸を減額提示されたが、そこを巨人がうまく交渉し獲得した


中堅クラス値下がり


 名の通った働き盛りのメジャー・リーガーたちが現在、お買い得になっている。魅力的な選手を獲得しやすくなったのは近年のMLBのFA市場変化にある。年内はまずトレード市場が動き、左腕の救援投手など希少価値のあるFA選手が決まっていく。年が明けてから超大物選手の争奪戦が本格化するのだが、その中で30代のミドルクラスに位置付けられる選手群が値崩れを起こし、交渉も後回しになっているのだ。

 11月中旬に巨人と契約したヘラルド・パーラ。彼の1年前がそうだった。2018年にロッキーズで142試合に先発出場し443打席で打率.284、6本塁打、53打点の成績。19年の球団オプション(1250万ドル)をチームが行使せずFAに。そのときはまだ31歳。メジャー通算1000安打以上を打ち、ゴールドグラブ賞を2度獲得した好打好守の選手だけに、それなりの契約はあると待っていた。しかしオファーはなく、2月中旬のキャンプ前になってジャイアンツからのマイナー契約を受け入れるしかなかった。

 開幕前にメジャー昇格を果たしたものの年俸は175万ドル。シーズン中、ナショナルズに移籍。「ベイビーシャークダンス」で人気者になり世界一に貢献した。しかしこのオフ、ナショナルズのオファーは100万ドルと減額だった。ほかの球団もすぐに動いてくれる気配がない。そこで獲得に速攻で動いた巨人に決めたのだ。

 阪神と契約が基本合意となったジャスティン・ボーアは15年から18年まで4年連続2ケタ本塁打(平均20.7本)をマーク。1年前も阪神から誘われていたが、エンゼルスを選択した。だが今季は一塁で37試合、DHで3試合の先発出場とチャンスを与えられなかった。

オールスターのホームランダービーにも出場した経験のあるボーアは阪神と基本合意。彼クラスの中堅FA選手はメジャーの中ではなかなか行き先が決まらない。そのため出場機会を求め日本へという流れになっている


データが移籍に影響を及ぼす


 現在、こういったミドルクラスの選手は仕事がなくなる恐怖心に怯(おび)えている。これまでメジャーには30球団もあり、どこかが手を挙げてくれると信じられた。FA市場のメカニックは、それぞれのポジションでまず一番人気の選手の移籍が決まり、獲得できなかった球団が、2、3番手のオプションに行く。彼らも順番を待てばオファーは来たはずだ。

 さらに、アナリティク(データ解析)が商慣行を大きく変えた。昔なら、ベテラン監督が過去の人間関係、縁、経験から、こういう選手はクラブハウスに必要だから獲得してほしいと進言し決まることがあった。だが現在はアナリティカルなGMが増え、アルゴリズム(算法)重視。全球団、使っているデータはほぼ一緒で見るポイントも同じ。ゆえに個々の選手の評価も似通ってくる。結果、30代でエリートでなく希少価値もない選手の需要は下がった。メジャーでの実戦経験も少なく給料が安く25人枠から動かしやすい若手選手にチャンスを与える状況になった。

 アズドルバル・カブレラはパーラと同じくナショナルズで優勝に貢献したが、1年前にFA市場で苦い経験をした。その時点で通算1530安打、162本塁打、2度のオールスター出場。前年の年俸は825万ドルだったから、それに近いものを期待する。しかし1月下旬に届いたレンジャーズのオファーは1年350万ドル。ひどい契約だと代理人を解雇した。ところが調べてみると、これ以上のオファーはなく、断ったら仕事は若手に取られるだけ。代理人に陳謝し、この金額を受け入れている。

1月まで待てば日本球団が有利に


 現在のメジャーの状況で、日本の各球団がこれを利用しない手はない。これまでは基本、年内に外国人選手の補強を済ませてきた。2月1日のキャンプ初日に合流させるには、ビザ取得の関係で1月10日までに決めてきた。しかし現在は1月中旬以降に良い選手がたくさん残っており、彼らも焦っている。日本からの話を真剣に検討することで、各球団は交渉で有利な立場に立てることを表す。

 だが獲得しても、今季途中加入した阪神のソラーテのように50日間で帰ってしまったのでは面目丸つぶれだ。そこをうまく使いこなすカギは、監督の対話力だろう。あの大ベテランのジョー・マドン監督(エンゼルス)でさえ、選手を一方的に叱ったりはできないと言う。大事なのは「CONVERSATION」なのだと。

 メジャー・リーガーはプライドが高く、扱いにくいと多くの日本人は先入観を持っているかもしれない。しかし彼らも野球はチームスポーツであり、チームを束ねる監督ときちんとコミュニケーションを取り、考え方を理解することが重要だと分かっている。日米のプロ野球では起用法など、常識とされる部分でもいろいろと相違点がある。そこを監督や首脳陣が把握、きちんと説明し、彼らが日々納得してプレーできるように心を砕けば、メジャー同様のパフォーマンスを発揮するはずだ。

 このオフ、12年のオールスターMVPで、通算1962安打、144本塁打のメルキー・カブレラ。オールスター3度、ゴールドグラブ3度、通算1432安打、234本塁打のカルロス・ゴンザレスですら契約は難しいかもしれない。市場にお買い得の選手は少なからずいる。積極的に調査し、試すべき時代になった。

首位打者1回、ゴールドグラブ3回と5ツールプレーヤーのゴンザレスさえ来季の行方が分からない。日本でプレーする条件は整っている。あとは日本のチームが動くか!?

関連情報

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング