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「四番打者」を語る

高橋由伸(前巨人監督)『なぜ、22歳未完の大砲を抜擢したのか?』 「岡本のような選手が出てこないと、ジャイアンツは苦しい時代が続くかもしれないと思っていた」

 

24歳になったばかりの巨人の四番・岡本和真が、快調に数字を伸ばしている。開幕から5カードを終えた時点で打率.414、24安打はリーグトップで、5本塁打、13打点は同2位。得点圏打率は.500だ。ここでは2018年の巨人監督時代に、まだ22歳だった岡本を四番に据えた高橋由伸氏に解説を依頼。なぜ、未完の大砲を抜擢したのか、そのワケを聞いた。
取材・構成=坂本匠、写真=小山真司、山口高明、BBM

不動の四番打者に成長した岡本和真/写真=小山真司


ジャイアンツの四番


 時代によって「三番が最強だ」、「二番が最強だ」と言われることもありますが、四番がチームで最も打つ選手、チームの顔であり、中心選手が座る打順であるという私の考えに変わりはありません。野球を始めて30年以上、アマチュアのころも、プロに入ってからも、そして監督として過ごした期間も、四番は重要な打順であり続けたと感じています。

 本題から話は逸れますが、だからと言って、三番最強、二番最強を否定するわけでもありません。一番は出塁率が高くて足が速い選手、二番は小技が利いて、三番はバランスの良い選手……というような、長い年月をかけて作り上げられたイメージとセオリーが(ベースとしてとても大事なことだと思います)、データなどがより充実して活用されていく中で形を変え、効率よく得点につなげていくために三番を重視し、二番を重視していく、というのも理解することができます。

 でも、私は現役時代に勝利を背負い、そのバットでとても多くの影響をチームに与えてきた“松井秀喜”を目の前で見てきました。日本球界を見渡せば、長嶋茂雄(巨人軍終身名誉監督)さん、王貞治(ソフトバンク会長)さん、野村克也(元南海ほか)さんなどチームを背負った四番打者はいっぱいおられますが、やはりすぐ近くで一緒にプレーして、イヤというほどその存在の大きさを感じさせられたのが“松井秀喜”で、彼こそが真の四番打者だと思っています。

松井秀喜


 今回、『巨人の四番』と『岡本和真』についてお話しするのですが、結論から先に言ってしまうと、今、ジャイアンツの四番に座る岡本は、“松井秀喜以来の本当の四番”になりつつあるのではないでしょうか。

 まず、ジャイアンツの四番について触れていきましょう。私がジャイアンツに入団したのは1998年ですが、当時は清原和博(元西武、巨人ほか)さんが四番を打つ機会が多く、2000年以降は長嶋監督との「四番1000日計画」を経た松井さんが満を持して座ることになります。私のイメージでは、そこにいるのが当たり前、毎日そこにいなくちゃいけないバッターが四番打者。松井さんは00年からヤンキースに移籍する前年の02年まで、3年間全試合フルイニング四番で出場しています。打撃技術はもちろん、体力、精神力と結果のすべてがそろっていなければ、そこにい続けることはできません。

 監督目線では極端に言うと、四番は考える必要のない、悩まされたくないポジションで、それはファンの皆さんも同じなのではないでしょうか。今季は開幕から5カードを終えたところで打率.414(セ・リーグ1位)、5本塁打(同2位)と好調なこともあり、岡本の四番に文句のある方はいませんよね? 成績が落ちれば周囲から不満は噴出するものですが、そのような批判に耐え、ココというところで一本を出す。それが“ジャイアンツの四番”なのかなと思います。松井さんだって・・・

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