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阪神・ジャスティン・ボーア インタビュー Baseball is crazy so...... 「自分の打撃にしっかりと向き合っていくことが大事」

 

全力疾走、厳しい打球にも全力で飛びつく。打てば規格外の飛距離でファンを魅了する。開幕当初はなかなかヒットが打てず、ファンから失格の烙印を押されかけた。しかし、全力でプレーする姿がファンの心にじわじわと浸透し、今では本塁打を打ったときの「ファイヤー!」を楽しみにしている。そんな虎に愛される新助っ人は、気を抜くことなく野球にまい進している。
取材・構成=椎屋博幸 写真=早浪章弘、毛受亮介、宮原和也、BBM


スロースターター


 開幕は四番に座ったボーアだが、日本の野球に慣れるまでに時間が掛かった。開幕2試合で無安打となり3戦目には四番を外されるなど、屈辱の時を過ごした。ファンやマスコミからは、その風貌や打撃でのスタイルが似ていることから「バースの再来」とまで言われ、大きな期待を掛けられていた中で開幕からまさかの18打席無安打。苦しい立場でシーズンを走り始めた。

──開幕当初はなかなか安打が出ませんでした。こんなはずでは!? というような焦りなどはなかったでしょうか。

ボーア もともと昔から僕はスロースターターだったから、こういう感じになってしまうかな、というのは思っていた部分ではあったんだ。でもそこは常に同じ気持ちで、しっかりと前を向いて、試合に臨むことを心掛けていたよ。徐々に慣れてきた感じがしてきているよ。

──スロースターターということですが、それはメンタル面でも技術面でも、という意味でしょうか。

ボーア 特にメンタル面でスロースターターというわけでもなく、技術面がそうだということでもないんだ。僕のベストシーズンは、マーリンズ時代の2017年だったんだ(25本塁打、83打点、打率.289)。そのときも同じようなスタートを切っていて、最後にはいい成績になった。だから、今季スロースターターになったからと言って気にはしていないよ。もしかしたら今後、ベストのシーズンになるかもしれないからね。

──では、ある程度自分で予測できた中でのスタートとなっているのですね。

ボーア もちろん、自分ではしっかりと準備をして臨んだシーズンだったから、最初から打っていきたいとは思っていたけどね。そこはそれも野球の一部だと思っていることだし、仕方ない、次の試合に向けてやっていこうという気持ちではいたよ。

──開幕して2カ月が経過しましたが、日本の野球自体には慣れたでしょうか。

ボーア そこはいろいろなことを来日前にマギー(ケーシー・マギー)に聞いていたから問題ないよ。

「スコシ」日本野球に対応


 7月1日、2対6で迎えた9回表、中日の左腕・岡田(岡田俊哉)の初球の変化球を一閃した打球は、低い弾道のまま右翼席にスタンドイン。来日39打席目で生まれた待望の1号本塁打だった。しかも今春のオープン戦、練習試合から続いていた対左投手の無安打を、27打席で止める一撃。左投手に弱いとレッテルを貼られていたが、この一発で払しょくした。そこから日本の野球にも慣れ、日本人投手にも徐々に慣れていった。それもとにかくマジメに、1日1日をストイックに過ごしているからだ。

──7月に入り、ホームランも出るようになり、ようやく本領発揮と、自分でもそう感じていますか。

ボーア 僕の中では、いい状態に上がってきたという感じでもないと思っているんだ。いつが一番いい状態なのかということではなく、とにかく1日1日……野球というのは、いろいろと状況が変わっていくものなので、そこをきちんと見極めてアジャストしながらいまはやっている。いいときもあれば悪いときもある、それが野球の一部だと思っているよ。

──1日1日、1試合1試合を全力で取り組んでいるということですね。

ボーア 1試合ごとに何が起きるか分からないし、1年1年どういう形で変化していくかも分からないのが野球で、クレイジーな部分があるよね。それに対して一喜一憂しているといいことはないから、とにかく常に前を向いて、一つひとつのことに向き合っているという感じで取り組んでいる。その部分についてはメジャーでも日本でも変わらないよ。

──メジャーと日本のプロ野球でも、そこは同じだ、と。

ボーア う〜ん、いやちょっと待って。そこは少し違う部分もあるかな。やはり日本の野球には、初めての部分が多いから「スコシ(少し)」だけだけど、日本の野球に対応していきながら、やっていかなければいけないよね。もちろんやっているつもりだよ。

──初めて対戦する日本の投手などへの対応ということでしょうか。

ボーア そうだね。日本人のピッチャーに対してだよね。何度か対戦していく中で、しっかりと対応していかないといけないからね。前の対戦のときにどう自分が感じたのか、などを考えながらやっていかないといけないし、それは今もやっている。でも、前に対戦したからと言って、次の対戦で簡単に打てるということでもないよね。そこは向こうもしっかりと考えてくるからね。いろいろな対策を練って抑えにくるから。シーズンが終わるまで、それの繰り返しだと思うし、それに対してもしっかり考えて打席に立っていきたいと思う。

──メジャーと違い、5球団のチームの中で繰り返しの対戦となります。その部分でも対戦が多くなり、対応がしやすいのでは? と思ったりします。

ボーア それについては、相手投手がどうのこうの、とか対策を練って、こういうふうに打っていかなくてはいけない、というのではないと思っているよ。自分がどういう感じで打ちたい、とかを考えていきながら、まずは自分の打撃にしっかりと向き合っていくことが大事なことだと思っているよ。

──では、日本の投手というのをどう見ていますか。

ボーア メジャーのピッチャーのほうがいいとか、日本のプロ野球のピッチャーのほうがいい、ということはまったく考えていないんだよ。日本の投手に関して言えることは、日本の投手はそれぞれに個性があっていいピッチャーがたくさんいるということだよね。

──その中で、一番印象に残っている投手を挙げてもらうことは可能ですか?

ボーア それは答えられないね。まだまだシーズンが続いているから、シークレットにしてくれるかな(笑)。そこは教えられないよ。

──そうですか。日本の野球にもなじんできた中で、相手チームの選手に一塁で声を掛ける姿も見かけます。

ボーア そうだね、一塁を守っているからね。一塁に打者が来たときには話し掛けたりしているよ。僕と同じ外国人選手とも話すけど、彼ら以外、当然ヒットを打って一塁に来た日本人の打者にもいろいろと話し掛けているよ。

いかなるプレーにも全力を尽くすため、守備のときもヘッドスライディングを惜しまない


甲子園の雰囲気はイイね


 新型コロナウイルスの影響を受けていた中で、5月末から開幕に向け始まった練習試合。その試合の中で、ボーアが本塁打を打つと漫画「ドラゴンボール」の「かめはめ波」を模した“ファイアボールポーズ”を披露。開幕後もこのパフォーマンスを続ける中で、ボーアが本塁打を放つと甲子園の5000人の観客は大いに沸き、ボーア自身もカメラの向こうのテレビで観戦しているファンに向け“ファイアボール”を決めている。

──今季、本塁打を打ったときに両手を円にし、押し出すポーズで喜びを表していますね。

ボーア 本塁打とか二塁打を打つたびに“ファイアボール”っていうパフォーマンスを作っているんだ。ドラゴンボールとクラッシュというゲームからつけたんだ。

──現在は観客は少ないですが、入場しているファンと一緒に戦っています。そこでパフォーマンスを披露して盛り上がりを感じますか。

ボーア 甲子園球場の雰囲気はすごいイイ感じだと思う。現在は5000人しか球場に入れないけれど、それでもそう感じるからね。これが満員になったときは……と想像するとすごいよね。

──早く満員の甲子園の中で、大きなホームランを打ちたいと思っているのではないでしょうか。

ボーア 映像で、満員の甲子園の中で打者がホームランを打っているシーンを見ていたので、僕も早くそういう気分を味わいたいと思っているよ(笑)。

日本の投手への対応も必要だが、まずはしっかり自分のバッティングをすることが大事なことだと理解している


──甲子園の応援というのは、メジャーでいうところのプレーオフのような雰囲気に近いと思います。

ボーア そうだと聞いているし、その中で打ちたいと思っているよ。

──その状況の中で、メンタル面と技術面はうまくマッチしている状態になっているでしょうか。

ボーア う〜ん、「マアマア(まあまあ)」だね。そこは自分の中で、いい状態の日があれば、そうでないときもある。チームの状態も同様で勝つ日もあれば負ける日もある。だからはっきりと「こうだ」と言えない部分はある。その意味でも自分の現状を表すと「まあまあ」というのは一番しっくりくると思うね。

──では、これからも先ほど言っていたとおり、いろいろなことに一喜一憂することなく、プレーをしていくことしか考えていないのでしょうか。

ボーア まったくそのとおりだよね。まずは目の前のことに全力で取り組んでいくつもりだよ。

やはり素手で打ち続けている



 春季キャンプ中のインタビューでは「シーズン中もずっと素手で打つよ。バッティンググローブは使用しない。素手での打感が好きだし、それを重視したいと思っているからね。日本でも続けていくつもりだ」と語っていた。湿気の多い日本でも実戦中。「アリゾナも暑かったし、それに慣れているから」とも語っていた。現在はメジャー当時から変わらず、滑り止め対策でヤニをしっかりと塗りながら、打席に入っている。バットに付けたヤニがヘルメットを触ることで、ヘルメットの色もヤニの色になっている。ボーアと言えば……松ヤニのついたヘルメットがトレードマークになりつつある。

編集部選 ボーアがブレークしたあの試合!


7月5日 対広島戦[マツダ広島] 8対3


同点からの来日初満塁弾

 先制された直後の3回。前打者・大山悠輔が押し出し死球で同点に追いつき二死満塁の場面。広島の先発・遠藤淳志に2ストライクと追い込まれた3球目だった。ど真ん中に甘く入った129キロのチェンジアップ。「追い込まれて、より一層集中したんだ」。打球は右翼手の鈴木誠也が一歩も動かない飛距離の来日初満塁弾となりリードを奪った。満塁の機会でことごとく凡打を繰り返していただけに、起死回生の一発。これで目覚めた。

PROFILE
ジャスティン・ボーア●1988年5月28日生まれ。アメリカ・ワシントンD.C.出身。193cm122kg。右投左打。ウエストフィールド高からジョージ・メイソン大を経て2009年ドラフト25巡目でカブスに入団。13年のルール5ドラフトでマーリンズへ移籍。14年にメジャー・デビュー。17年にはMLBオールスターのホームランダービーに出場。19年はエンゼルスで大谷翔平のチームメートとしてプレーした。オフにFAとなり阪神と1年契約を結んだ。今や不動の五番打者として阪神に欠かせない存在に。全力プレーと「ファイアボール」のパフォーマンスで人気者だ

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