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グラブを語れ

グラブづくり最前線1 Zeemsの挑戦。元プロ野球選手の西岡三四郎が立ち上げた野球用品ブランド

 

大手メーカーに比べたら規模は小さいが、一つひとつのグラブに手間と愛情を込めている。バットマンのようなロゴマークの会社の社長は、プロの世界で通算62勝を挙げた南海の投手だった。


魔法のグラブさばき


 野球用品のブランド「Zeems(ジームス)」は名古屋市内にある。創業者であり、代表取締役社長は元プロ野球選手の西岡三四郎。兵庫県の洲本実業高時代は甲子園の出場こそないが、キレのある速球投手でプロの注目を集め、1968年にドラフト2位で南海に入団した。ルーキーイヤーはわずか1勝に終わったものの、2年目に早くも10勝をマーク。防御率2.44はリーグ5位の好成績だった。その年から73年まで5年連続で2ケタ勝利を挙げ、南海の主力投手となった。

 新人時代の1年目、西岡はその後の人生に関わるほどの大きな衝撃を受ける。プロの投手のスピード、打者の飛距離にも驚いたが、同じチームにいた一人の外国人選手のキャッチボール、そのグラブさばきに目を奪われた。



 ドン・ブレイザーです。普通にキャッチボールをしているだけなのですが、とにかく早い。早いというのはボールを捕ったと思ったら、もう投げている。魔法のようなグラブさばきでした。それまで僕らはキャッチボールというのは、まずはしっかりとボールを捕る、そしてボールをつかみ(握り)、それから相手に向かって投げる、それが基本だと教えられていました。でもブレイザーの場合は違っていました。違うというか、グラブの中にボールは一瞬も止まっていない。ボールを捕ったと思ったら、もう投げていました。

 最初はルーキーの僕らを驚かせようと思って、ふざけてやっていると思っていたんです。手品を見せてやろうかみたいな。でもそれは手品でも何でもなく、ブレイザーにとっては普通のキャッチボールでした。 セカンドの守備範囲は狭かったですが、範囲内に飛んで来たボールは確実に素早く処理していました。よく見ていると、捕ってから早い理由が分かってきました。グラブでボールを捕る(つかむ)のではなく、グラブにボールを当てて止めているんです。だから握り替えが早い。いわゆる“当て捕り(※)”です。私はまだプロに入団したばかりでしたが・・・

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