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2020新人王最有力候補インタビュー

ロッテ・安田尚憲インタビュー 原点は忘れない 「何があっても今年のテーマを貫いていきたい」

 

ときに自分を見失いながらも、成長を示している。15年ぶりのリーグ優勝を目指すロッテの四番に座り、奮闘を続ける高卒3年目の21歳。パ・リーグの新人王レースは、Vへの使者となり得るこの男が最有力候補だ。原点を思い出し、奮闘するバットマンがペナント&新人王レースを熱くする。
取材・構成=鶴田成秀 写真=高塩隆、BBM ※成績は9月17日時点


重圧があるから得られる充実感


 初の開幕一軍を勝ち取った今季。だが、打率1割台と不振にあえいだ。そんな中で井口資仁監督が四番に抜てきすると、期待に応えるべく自らを奮い立たせた。一軍で、四番として戦える──。そんな充実感が成長を呼んでいる。

──シーズンも後半戦に入りました。

安田 初めて一軍の舞台で長くプレーしているので充実感もあって、やりがいがすごくある。もちろん責任も感じながらですが、とにかく、やりがいを感じています。

──7月21日からは四番起用が続いていますが、重圧より“やりがい”が強いですか。

安田「オレが四番バッターだ」と言い切れるほどの実力はまだないので、プレッシャーを感じないようにしているんです。ただ、チャンスで多く打席が回ってくる打順。打撃にしても、守備にしても勝敗にかかわる部分が大きいので、責任感はあります。でも、それも含めてやりがいという感じなんです。プロ野球選手を夢見て小さいころから野球をしてきた中で、ここ(一軍)でプレーできている。楽しさと言ったらちょっと違うかもしれないですけど“やりがい”を強く感じているんです。

──四番起用を伝えられたときから、その気持ちは変わらず?

安田 いや、四番で出ると知ったのは試合直前だったので、ビックリしました。四番を打つとは思っていなかったので「まさか」って。でも、うれしかったんです。一軍の舞台で、四番を打たせてもらえることは光栄なこと。「やってやるぞ」という気持ちが、すぐに出てきました。

──開幕から結果が出ず、苦しんでいた中での四番起用でした。

安田 だからこそ開き直っていくしかないな、と思っていたんです。全然、打てていなかったので、深く考えずにシンプルに。ランナーがいる場面なら、そのランナーをかえすことだけを考えて、打席に向かうようにしました。

──心構えの部分では、マーティン選手にアドバイスをもらったことが大きかったそうですね。

安田 そうなんです。マーティンに言われたんですよね。「自信を持って打席に立て」と。「打席の中では、自信がない姿を見せるな」と言われて、ハッとしたんです。しっかりと自分のスイングをして勝負する。マーティンが、その一番大事なことを思い出させてくれたんです。

──それまでは弱気だった、と。

安田 開幕当初は、自分だけでテンパっていたんですよ。結果を出さないといけない、と思い過ぎていて。あまり周りが見えていなくて、しんどい時期が続いていたので、すごくありがたかった。だから、四番になってからは、自信を持っていこうと思い続けられるんですよね。

──そんな四番は、どんな役割が求められていると考えていますか。

安田 チャンスで多く回ってくる打順で、1試合に1度は勝敗にかかわる打席がある。そこで打てるか。とにかくチャンスの場面で、ランナーをかえしていく。得点を挙げることが、役割だと思っています。

──その言葉どおり四番定着以降の得点圏打率は3割を超えています。

安田 積極性というか、自分が弱気になっていないことが良い結果にもなっているんだと思うんです。

結果から課題を見つけつつも前を向く。試合前の表情が常に柔らかいのも、一喜一憂しないことの大切さを学んだからだ


── 一方で、しっかりボールを見極めている印象も受けます。

安田 狙い球を絞って打席に立っていますから。すべて打てるボールではない。しっかりボールを見極めて、追い込まれてからは逆方向への意識も持っている。状況に応じて打つ方向も意識しているんです。自信を持つことで、視野も広まった。それで、いろんなことが見えてきて、打席にも落ち着いて入れるようになったんだと思います。

──となると、自分の好不調時の傾向も分かってきたのでは。

安田 積極性がなくなったときは、調子が悪くなっているときですね。バットが出なくなっているというか。バットを振らなければヒットは出ない。甘いストライクを1球で仕留める。それができるときは状態がいいときなので、やっぱりメンタルの部分が大きいなと感じています。

──メンタルですか。

安田 もちろん、技術も大事ですよ。でも、毎日試合をして、長いシーズンを戦う上では、メンタルの大事さを感じているんです。

──メンタル強化は経験を積むしかない?

安田 まだ、一度打てなくなってきたら、そのまま打てない時期が長く続くことも多いので。そこも経験だと思うんです。どうすれば打開できるのか。学んでいきたいです。

技術を磨きつつ気持ちをリセット


──9月に入って井口監督から「原点に戻れ」と言われたそうですね。

安田 はい。「もう一度、キャンプからやってきたことを思い出してやろう」と言われて。8月から打てない時期が続いて、試行錯誤しながらやっていたんですけど、そこでもう1回原点に戻ろう、と。

──その“原点”とは。

安田 しっかりトップを作って、上からバットを出してストレートをはじき返すこと。ずっと練習してきたことです。今、なかなかストレートをとらえられないのが一つの課題。そのストレートをとらえるために、練習してきた自分のスイングをする。それが今年のキャンプからのテーマであり、今年の原点なんです。

──確かに直球勝負の傾向は強いです(下の円グラフ参照)。

安田 ストレートをいかに仕留められるか。それがキャンプから取り組んできたことです。自信を持って打席に立ち、自分のスイングでボールを仕留める。結果が出なかったときこそ、立ち返る原点なんだと、あらためて思っています。

■今季の安田尚憲に対する球種割合

──今後、直球をはじき返すためには。

安田 練習しかない。力をつけることが一番だと思います。でも、1日1日をリセットする力も必要だと感じているんです。結果が出なかったことを、翌日に引きずっても良くない。だから、リセットする時間を作っているんです。

──どんな時間なのですか。

安田 それも練習です。気持ちをリセットする意味で、試合が終わってから練習するんです。

──無観客試合の際は、試合後にノックも受けていましたね。

安田 守備は技術向上の意味ですけどね。やっぱり守れないと試合に使ってもらえないですし、打てればいいわけではないので。バッティングも、もちろん技術的な意味もありますが、意識しているのは、1日の最後にバットを振ってリセットすること。だから、バットを振る数は決めず、納得いくまでやるんです。

課題の三塁守備は居残りノックなどの成果もあって向上。


──ホームゲームの場合は室内で打ち込めますが、ビジターの場合は。

安田 バットを振ること以外にもできることはあるんです。ストレッチでも何でもいい。その日の試合を振り返り、自分を見つめ直す時間を作りたいんです。リセットする時間を作らないと、翌日に引きずりかねない。長いシーズンを戦う中で大事なことだと感じているんです。

一方の打撃では直球を仕留められずファウルになるなど新たな課題が見つかっている


──その考えは一軍でプレーする中で得たことですか。

安田 鳥谷(敬)さんにも言われたんです。「良いときも悪いときもプロは次の試合が来る。だからリセットする力が必要だよ」と。リセットの意識を持ったのは、今年からです。

──これからは、重圧のかかる試合も増えていくだけに、より“切り替え”は大事になってきそうですね。

安田 はい。より1つの勝ち、1つの負けが重くなる。だからこそ、よりチャンスで打てるようになっていきたい。チームの勝利に近づけるようなバッターになりたい。普段より、プレッシャーがかかってくるのは分かっているので、自分のスイングができるように準備していくだけです。

──さて、プロ3年目のシーズンも終盤です。今後、目指すものは。

安田 当然、ホームランを打ちたい気持ちはあります。でも、今は一発を狙って大きいスイングをするよりしっかり自分のスイングをすること。その上で、ランナーをかえせるように。自分のスイングをしていけば、いずれホームランも出てくる。それに、とにかく試合に出続けたい。このまま一軍で完走したい。そしてチームの勝利に貢献し続けられる選手でありたいと思っています。その先に数字が残る。打率やホームラン数は、試合に出るからこその結果です。試合に出て分かることも多くあるので、とにかく試合に出て、何かを感じ、勝利に貢献していきたいです。

──新人王の資格も残り、受賞も期待されるところです。

安田 獲りたい気持ちはあります。でも、今の自分の成績では届かない。それに、新人王を目指して数字を伸ばすのではなくて、目指すのはチームの勝利。自分の成績が上がって、チームが勝って、そして優勝する。その結果が新人王というタイトルになれば良いと思っています。とにかくチャンスでヒットを打つ。勝負所で1本を出す。今はそれだけです。

CLOSE UP!2020新人王レース


現在のポジション 四番・三塁

 5本塁打はやや物足りず、その分インパクトに欠けるが、四番定着後の得点圏打率は.310と勝負強さは上々。三塁守備も2失策と安定し、定位置奪取が何よりチームへの貢献だ。あとは優勝に導くだけ。Vチームの四番となれば印象は大きくなり、新人王にも近づくはずだ。

PROFILE
やすだ・ひさのり●1999年4月15日生まれ。大阪府出身。188cm95kg。右投左打。履正社高1年時から中軸として活躍し、3年春のセンバツ準優勝に貢献。高校通算65本塁打をマーク。2018年ドラフト1位でロッテに入団し、2年目の昨季は一軍出場こそなかったがイースタンで本塁打、打点の2冠を獲得。今季は開幕一軍を勝ち取り、7月21日から四番に定着している

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