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二塁×遊撃 魅惑のコンビネーション

ソフトバンク・本多雄一一軍内野守備走塁コーチが語る コーチとして見る二遊間。若鷹たちへの思い

 

優勝を目指すソフトバンクにとって、鍵となるポジションだ。ここ数年、なかなかレギュラーが決まらない二塁と、今宮健太をケガで欠く遊撃。若手選手の起用も増え、本多雄一内野守備走塁コーチの指導にも、自然と熱が入る。
取材・構成=菅原梨恵 写真=小山真司、湯浅芳昭


準備を習慣にする


 選手時代、さまざまな思いを胸に取り組んできた二遊間だが、コーチとしては違った視点が必要になることもある。選手一人ひとりと話し合いを重ね、それぞれに合った形を作り上げていく。

 僕自身、長くセカンドを守ってきましたし、一軍でショートを守ったこともありましたが、コーチになってからは、選手のときの自分の感覚、「自分がこうだったから、こうできるだろう」というのは消して指導しています。セカンドを守る、ショートを守る、といっても、やはり選手一人ひとり、全然違いますから。それぞれに動きの特徴があって、打球の見え方だって同じわけじゃない。だから、“違い”を意識しながらの練習を、一人ひとりといろいろと話し合ってやっています。

 特に、一軍であまりセカンド、ショートをやったことがないとか、二軍ではできるけど一軍ではできないという選手たちは注意が必要です。ほとんどが若い選手になると思いますが、一軍と二軍とでは緊張感も違えば、打球の速さなどレベルも違う。そういったところで苦戦をしている選手は、一軍で試合に出ることができても定着はできません。これって意識一つの問題だとも思います。あまり深く考えずに何となく二軍でやっている人は、ただ試合をこなしている場合が多い。例えば、失敗したときにどう次につなげるかとか、考えられていないんですよね。

 大事なのは“準備”です。事が起こる前にいかに備えておくか。こちらから指摘することもありますが、結局は本人次第なんですよね。自分で考えてやる必要がある。自分の中で習慣づけられるかどうか。日常生活でも、顔を洗ったり、歯を磨いたりしますよね。次はこれがあるから、こうしようと動く。野球も一緒で、このランナーが出たら足が速いから、この打球が来たらこう処理しようとか、前もって考えるのが大事です。特に二遊間はボールをさばく回数が多いポジション。準備すべきことは、たくさんあります。

何かヒントをつかんでくれればと、手取り足取りで周東に指導する本多コーチ


常に声を出して


 10月4日現在、周東佑京は43試合(そのうち先発は34試合)、川瀬晃は40試合(同30試合)で、それぞれ二塁、遊撃の守備に就く。本多コーチの指導の下、練習中から多くのことに取り組み、時には悔しさから……。日々、成長する若鷹たちを、厳しくも温かい目で見守っている。

 セカンドもショートも、チームとしてはやはり固定できるのがベストです。今季は今宮(今宮健太)の離脱もあって、両方とも今ある戦力でやりくりしなければいけなくなりましたが、周東や川瀬ら若手にとってはチャンスでもある。毎日、毎試合、必死になってやっています。緊張しながら、いいプレーをしたと思ったら、失敗して。失敗も二軍の失敗と、一軍の失敗ではまったく違いますからね。

 だから、周東もああやって涙するわけで(※9月12日の西武戦=PayPayドーム、二塁守備で1試合2失策を犯した周東はベンチでこらえきれず涙を流した)。二軍だったら、ああいう感情は湧いてこないと思います。川瀬もエラーとかして、相当恐怖心を覚えたと思うんですよね。でも、その恐怖心を味わえるのって、一軍でしかできないので。

今季、一軍で二遊間コンビを組むことが増えた周東(写真左)と川瀬。意識を共有するため、練習、試合を問わずコミュニケーションを図る


 良いことも悪いこともたくさん経験して、人は成長します。もちろん、できれば一番ですが、こちら側もミスはあると思って見ている。だから、『ミスした後、どうするか』。ミスをミスで終わらせずに、“振り返ってどういう状況だったか”“そのときに、どういう自分の一瞬の判断で、どういうプレーをしたのか”というところは、しっかり試合後に話し合いますね。

 僕自身は、涙する周東を見て、いい感情だなと思いました。そして、あのときの周東に必要だったのは、この失敗、涙を、必ず次の成功に変えるためにやっていくこと。プロ野球というのは、1日たりとも待ってくれません。ほぼ毎日試合がありますから。だから、下を向いたり、いつまでも引きずって泣いている暇はないよ、と、試合後に居残り練習をしたんです。次の日はデーゲームでしたが、恐怖心を持って朝を迎えるのか、練習することで少しでも気持ちを楽にするのか。周東自身も「このままでは嫌だ」という思いがあったようで、そういう面ではいい心構えを持っていると感じました。

 周東と川瀬のコンビネーションですか? いや〜、まだまだ全然ですよ(笑)。でも、2人の意識づけという部分では、練習から、例えば上から投げるのか、下からトスするのかとか、「自分たちで思うところがあっても、すべて声に出しなさい」とは言っていますね。分かっていても常に、です。

 「意識の共有を、練習から試合のつもりでやりなさい」ってことなんですよね。一軍の試合って、いざ試合になったらプレーに一生懸命過ぎて、分かっていても声が出なくなるんです。特に彼らは、まだ技術もない、経験もないですから。自分たちで声を出して確認し合う。ここでさっき言った“準備”ですよ。守る上での“準備”が重要です。

 周東、川瀬に限った話ではありませんが、言葉を発しなくても、息の合う二遊間ができたらいいですね。何ならお互いの性格なども知り尽くして、良いところ、嫌なところも知り尽くして、守ってほしい。だからこそ、コンビを組み始めたときが肝心です。たくさん声を掛け合って、意識の共有を図っていってほしいです。

PROFILE
ほんだ・ゆういち●1984年11月19日生まれ。福岡県出身。右投左打。鹿児島実高から三菱重工名古屋を経て2006年大学生・社会人ドラフト5巡目でソフトバンクに入団。2年目の07年から二塁のレギュラーに定着し、武器である足では10、11年と2年連続で盗塁王に輝いた。18年限りで現役を引退すると、19年からは一軍内野守備走塁コーチとして後輩たちの指導にあたっている。現役通算1313試合(そのうち二塁出場が1294試合、遊撃出場が2試合)、1289安打、15本塁打、347打点、342盗塁、打率.276

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