週刊ベースボールONLINE

震災10年「3.11」をずっと忘れない。

激動のシーズン証言者・新井貴浩[元広島、阪神/当時日本プロ野球選手会会長]「同時開幕が決まったときは、うれしいというよりもホッとしました」

 

早々に開幕延期が決まったパ・リーグとは対照的に、セ・リーグは当初、予定どおり3月25日開幕を強行しようとした。これに待ったをかけるべく奮闘した一人が、当時日本プロ野球選手会会長の新井貴浩だ。被災地への思い、選手の思いを背負って立ち、両リーグ同時開幕の実現へ。最後まであきらめることなく、全力で突き進んだ。
取材・構成=菅原梨恵 写真=BBM

両リーグ同時開幕に向けてはセ・リーグ側の状況がなかなか進展せず、厳しい表情浮かべる新井選手会会長


みんなの思いは一つ


 震災が起きた3月11日の14時46分ごろ、私は甲子園のロッカールームにいました。揺れはそれほど大きいものではありませんでしたが、しばらくしたらテレビの映像が一斉に切り替わって。津波の様子など悲惨な映像が次から次へと映し出され、これが現実に起こっているとは思えず、信じられなかったです。

 プロ野球選手会として開幕延期を初めて訴えたのは数日後のこと。この日はもともと3月中に解散する方向で進んでいたプロ野球選手年金に関する集まりがあり、東京にいました。各球団の選手会長も何人かいて、そのときに楽天の選手会長・嶋基宏君が「今、仙台は野球ができる状況じゃない」「生きていくのも大変な状況で、とてもじゃないけど野球は……」と言っていた。そこで一気に開幕延期の話が出てきて、その場で延期を要請させてもらったんです。代表して私が手を挙げ発案させてもらったのですが、会場がすごくざわついたのを覚えています。

 その場は一度、預かるという形になり、NPBとしての最初の発表は17日でした。パ・リーグが4月12日に開幕が延期された一方で、セ・リーグの予定どおり3月25日開幕という判断は、非常に残念でしたね。こんな大災害が起こって、今この瞬間にも多くの人が大変な思いをしている。日本全体が被災した方たちのために何かできないか、がんばろうと一致団結している中で、「どうしてセ・リーグとパ・リーグは足並みをそろえられないの?」と。残念で残念で・・・

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