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昇竜の記憶 中日ドラゴンズ85年史

中日・柳裕也インタビュー 淡々と激しく。「150キロのストレートが投げられるわけではないから、いろんな変化球を使って勝負していくしかないんです」

 

プロ5年目の今シーズンは、ここまで抜群の安定感を見せている。9試合に投げて4勝1敗、73奪三振と防御率1.62はリーグトップ(5月31日現在)。キレのあるストレートに多彩な変化球で打者を翻弄している。心技体と充実の中にある27歳の右腕に好調の要因を聞いた。
取材・構成=牧野 正 写真=桜井ひとし、榎本郁也、小山真司

開幕直前の決断で何かが変わった。状況を俯瞰して見ることができるようになったのも大きい


大きな変化


 140キロ台前半のストレートに多彩な変化球を操って打者に的を絞らせない。プロ5年目を迎える今シーズン、柳裕也は大きな自信とともに女房役の木下拓哉のミットを目掛けて腕を振っている。しかも狙ったところへ正確に。奪三振や防御率という数字は気にしていない。考えているのは一球一球に意図を持ち、チームを勝利に導くことだけだ。

──今季は非常に安定感のある投球内容ですが、その要因はどこにあると考えていますか。

 それはもうたくさんあるんですけど……一番大きいのはプレートの踏み位置を一塁側から三塁側に変えたことだと思います。オープン戦の調子がずっと悪くて、このままではまずい、何かを変えなきゃと思っていたんですが、そこを思い切って決断しました。それで自分の感覚と打者のリアクションのずれがなくなっていきました。

──踏み位置を三塁側に変えたのはオープン戦の最終登板(3月20日の日本ハム戦/バンテリン)ですか。

 そうです。もともと三塁側を踏んでいたんですが、昨年の途中からずっと一塁側にしていました。でも結果が出ず、次はもう本番(公式戦)。その最後の登板の5イニング目に変えようとひらめいたんです。

──大きな決断だったと思いますが、そこで具体的に何が変わりましたか。

 僕は曲がり球が得意なんですが、その曲がりの角度です。一塁側から投げると曲がりの軌道がふくらむ感じがあって打者に見切られることも多かったんですが、それが少なくなったというか、いい角度で曲がるようになったと思います。曲がり幅も出てきました。

──そのほかの要因は?

 マウンド上ではプラス思考で考えるようにしています。例えば高めに強い打者と対戦するとき、これまでなら「高めに投げてはいけない」という意識で投げていましたけど、それを「低めに投げるぞ」と。そう考えることで体も気持ちも前向きになれますから。

──それを声にも出していますね。マウンドで何かつぶやいている場面がよく見られます。

 意識的にやっています。口に出すことで・・・

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