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育成の“プロ”に聞く[大学生編]

日体大投手コーチ・辻孟彦(元中日)  勝利と育成を両立する個性との向き合い方

 

ここからは、元プロで現在はアマチュア球界で指導力を発揮中の2人をクローズアップ。(社会人編はこちら)3年でプロ球界を去ったあと、母校・日体大で投手育成に力を注いでいるのが辻孟彦氏だ。同大の大学院で修士の学位を取得し、4人の右腕をプロの世界に送り出している。
取材・文=佐伯要 写真=BBM

選手個々と向き合い、4人のプロを送り出した辻孟彦氏


【大学生投手育成のポイント】
[1] 100人いれば100通りの指導を
[2] 基礎動作から専門的トレーニングへ

会話を重ねてメニュー作成


 コーチングで大事なことは何か?

 日体大の辻孟彦コーチ(元中日)は「どうしたら選手ができるようになるかを考え、寄り添いながら指導すること」と言う。

「例えば、親が子どもに初めて自転車を買ってあげたとき、最初は乗れなくても、『乗れよ!』と怒ったりしないじゃないですか? 乗れるようになるまで一緒に練習しますよね。野球で言えば、『低めに投げろ!』と言うのは野次と同じ。そのためにどうすればいいのか、工夫しながら、できるように導いてあげるのが指導者の役割だと考えています」

 中日で3年間のプロ生活を送り、2015年から母校・日体大のコーチになった。その年に「プロになるために大学で成長したい」と入学してきたのが、松本航(西武)だった。

 春季キャンプ(沖縄・久米島)で松本のキャッチボールを見たとき、辻は球質の良さに驚いた。同時に「これはプロに行かせないといけない」と、自分の役割の重みを感じた。それが指導者としての出発点になる。

 1年秋のリーグ戦から先発を任されるようになると、松本は変化球を磨こうとした。しかし、辻は「直球を磨き続けたほうがいい」と助言した。その理由をこう語る。

「松本は試合で勝つことを考え過ぎて、自分を成長させるよりも、うまくまとめようとしていました。目の前の試合で勝つことも大事だけど、この先に上の舞台で活躍することを考えるのも大事ですから」

 直球を磨くため、松本と会話を重ね、試行錯誤しながらメニューを作成した。松本は辻が提案したウエート・トレーニングやジャンプ系トレーニングなどに取り組んだ。その成果で1年時は140キロ台前半だった球速が・・・

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