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「投球術」大解剖 極めるプロのテクニック

【解説者の視点】藪恵壹 投球術の進化を探れ!メジャーの投球術の主流はプレートを巧みに使うことにあり!

 

あらゆる角度から「投球術」とは? を探っていく。ここでは阪神でエースとして活躍し、メジャー経験を持つ野球解説者の藪恵壹氏に、最新の投球術とその進化について聞いた。
写真=BBM、Getty Images

2018、19年のナ・リーグのサイ・ヤング賞のデグロム。圧倒的な投球は、一塁側のプレートを踏むところによるものだ


固定概念を捨て61センチの幅を上手に使う


 現代の投球術で重要になってくるのが、プレート(投手板)を踏む位置だと思っています。プレートの幅は61センチ(24インチ)あり、踏む位置によって景色が変わります。ピッチャーの景色が変われば、打者の景色(投手を見る位置や手の出どころ)も変わってきます。投球術とプレートの位置には相関関係があるのです。

 私が現役のときは、判を押したように、右投手は三塁側のプレートを、左投手は一塁側のプレートを踏んでいました。阪神に入団以降も、それが当たり前だと思っていました。

 その常識が大きく変わったのが、メジャーに行ってから。気が付いたのは、ジャイアンツ戦で登板したときで、投げているときではありません。打者として打席に入ったときです。なぜか右投手のアウトコースの真っすぐが、すごく遠くに感じたんです。その一方で、ボールの出どころがプレートの中からなので、ストライクだと思ってしまう。よく観察すると、一塁側のプレートを踏んでいたんです。なぜ、メジャーではそういう流れになったのか……。

 先発ローテの投手は、中4日で登板します。1試合100球前後で降板しますから、その球数の中でイニングを延ばしたいわけです。そうなると1球で打たせたい。当然、打者はストライクゾーン以外はボールだと判断して打ちません。右投手が三塁側を踏むと、投げた瞬間は右打者の肩口のボールゾーンから出てきますよね。これだと打者はストライクかどうかボールを投げたあとに見極めなければいけません。一方、左打者は、外角のボールゾーンからボールが出てくるので、反応が遅くなる。逆にリリースの瞬間、手の位置がプレートの上、ホームベースの上にあれば、打者にストライクと思わせてバットを振らせやすい。その技術を使って、長打を打たれにくい外角に投げていく。総合的に考えた場合、一塁側を踏む、という流れになるのは必然でしょう。これも一つの投球術ですよね。

 この一塁側から投げることで・・・

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