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日本代表監督Long_INTERVIEW

日本代表・稲葉篤紀監督インタビュー 誰も見たことがない世界へ 「オリンピックの頂点に立ったとき、野球界がどう変わるのか。誰も見たことがない世界を、このメンバーで見てみたい」

 

集大成のときを迎える。2017年7月31日の日本代表監督就任は、今夏開幕の東京2020オリンピックで頂点に立つため。新型コロナウイルスのパンデミックによる大会の1年延期も、その信念が揺らぐことはない。過去7度のオリンピックでの金メダル獲得は、公開競技だった84年のロサンゼルス大会での1度のみ。プロの参加が認められた00年のシドニー大会以降は、04年アテネ大会の銅メダルが最高位。自身も前回大会の北京ではメダル獲得なしの屈辱を味わっている。東京大会での“金”は日本球界のみならず、指揮官にとっても悲願である。
取材・構成=坂本匠 写真=小山真司、BBM


【1年延期で“変化”は?】本当は“19年”のまま─目に留まる選手が続々


──代表内定選手の発表を終え、東京オリンピック開幕まで1カ月余りとなりました。いよいよ、という状況ですが、今の率直な思いを教えてください。

稲葉 新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年間、オリンピックが延期となっていましたから、ようやくその時が来たのだなと。代表メンバーも発表し、あとは大会に向かっていくだけ。「ついに始まるな」という気持ちになっています。

──新型コロナウイルスの感染が拡大する中、昨年3月24日にまず大会の「1年程度の延期」が決定、そしてその後に「2021年夏に開催」が正式に決まりました。想定外の1年だったと思いますが、振り返ってみていかがですか。

稲葉 昨年2月のキャンプで各チームを視察して回っていたときには、このような事態になるとは想像もしていませんでしたね。「1年間の延期」という決定を聞いたときは、「中止もあるのではないか?」と言われていましたので、最悪の事態も考えていましたから、正直なところ「中止にならなくて良かった、延期で良かった」と思いました。(17年に)監督に就任してから、このオリンピックを最大の目標にしてやってきましたからね。

──プロ野球界も3月の開幕が延期となり、4、5月は緊急事態宣言もあって、6月まで開幕がズレ込むことになります。野球がない2カ月、事の推移を見守るしかない期間でした。

稲葉 何か心にぽっかりと穴が空いたような気持ちでした。野球を観る側も、プレーする側も、この時期に「野球がない」ことなんてこれまで経験したことがないわけですから。いったい、いつになればプロ野球を開催することができるようになるのだろうかと。それでも、われわれはその状況を受け入れるしかないわけで、私は家族との時間をゆっくりと過ごしました。当時、息子は年長だったのですが、野球に興味を持ち始めていまして、録画していた19年のプレミア12の映像をずっと観ていたので、つられて私も一緒に観ていました。客観的に観ていると、先制点を取られる試合が多くて(※全8試合中4試合)、よく逆転できたなと思ってみたり(笑)。あらためていろいろな発見がありました。

──その後、野球界も徐々に動き出しましたが、野球以外の競技もチェックして、「刺激を受けた」と話していました。

稲葉 野球はもちろんですが、この期間はいろいろなスポーツを観させていただきました。今年に入ってからの話題では、ゴルフの松山英樹選手がマスターズを制し、先日は全米女子オープンで笹生優花選手が優勝を飾った。日本人選手が世界で勝つことが多くなってきましたよね。メジャーで頑張っている選手もそうです。秋山翔吾(レッズ)やダルビッシュ有(パドレス)に大谷翔平(エンゼルス)……。世界を相手に戦っている選手の姿を見ると、やはり刺激を受けますよね。

──さまざまな制限がある中で、昨年プロ野球は6月に開幕し、120試合制の短縮日程ながら、シーズンを完走しました。20年のプロ野球、また、代表候補選手の活躍をどう見ていましたか。

稲葉 非常に難しい中でのペナントレースだったと思います。プレミア12をともに戦ったメンバーは一昨年の11月半ばまで試合をし、短いオフを経てのキャンプインでしたから「どうかな?」と思ってみていましたが、彼らの活躍はうれしいですよね。一方で・・・

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