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あの夏の記憶。わが青春の甲子園

あの夏の証言 星子崇(熊本工)・矢野勝嗣(松山商)1996年夏決勝対談 「奇跡のバックホーム」の真実

 

1996年8月21日。第78回全国高校野球選手権大会決勝は、熊本工と松山商による古豪対決だった。甲子園は4万8000人の大観衆。球史に残る名勝負を戦った右翼手と三塁走者が、25年前の頂上決戦を回顧する。
取材・構成=中里浩章 写真=BBM

1996年夏決勝VTR

今も語り継がれる名場面だ。10回裏一死満塁。本多の右飛で三走・星子はタッチアップしたが、右翼手・矢野の好返球により、サヨナラでの優勝の本塁生還を阻まれている


 松山商は1回表、渡部真一郎の適時二塁打で先制。二死後に3連続四球(2つの押し出し)で計3点を奪う。追う熊本工は2回裏に境秀之の適時打で2点差。熊本工の先発・園村淳一は2回以降立ち直り、松山商の2年生・新田浩貴も力投を続けたが、熊本工は8回裏に坂田光由の犠飛で1点差とする。熊本工は9回裏二死走者なしから1年生・澤村幸明のソロで3対3。10回裏は一死満塁。本多大介の右飛は誰もがサヨナラ犠飛かと思ったが、直前に右翼の守備に入った矢野勝嗣が好返球。松山商は11回表、先頭の矢野が二塁打で出塁し、犠打と四球で一死一、三塁から、星加逸人の一塁方向へのプッシュバントで勝ち越し。なおも、主将・今井康剛の2点適時二塁打で試合を決めた(6対3)。松山商は27年ぶり5度目の全国制覇。熊本工は、59年ぶり3回目の決勝進出も、初優勝はならず。

キャッチボールもせずまさかの守備固め


――2人の対面はいつ以来ですか?

星子 確か、2〜3年前ですかね。

矢野 甲子園で1回会ったときかな。

星子 そうそう。愛媛県勢の試合があって、見に行かないか、と。

矢野 星子君から連絡をもらって、僕もたまたま行くつもりだったので、チケットを取ってもらって2人並んで、試合を見たんだよね(笑)。

星子 あの決勝がきっかけになって、ここまで、交流が続いていますね。

――当時の話を振り返りますが、3対3の好ゲームになって延長10回裏の熊本工の攻撃へ。一死満塁であのタッチアップの場面を迎えます。

星子 一死三塁から敬遠四球が2回あって、(ライト矢野への)守備交代もあり、結構時間もあったので(三塁走者として)準備はしっかりできましたね。流れもウチに傾いていたし、普段どおりにやれば勝てるだろうなと。でも、それをバックホーム一発で、引っ繰り返されて(苦笑)。

矢野 僕はずっと一塁コーチャーをしていて、前半からリードしながらも熊工に押されているイメージがあったので、最後の最後まで何があるか分からないな、と。そんな追い詰められた雰囲気を感じながら、ベンチでも第三者的に見ていました。

星子 これは何度も取材でお話ししているんですけど、ライトに入る矢野君を見たとき、キャッチボールをせずに肩をグルグル回すだけで守備に就いたんですよね。だから「急に投げられるのかな」と思っていて。

矢野 僕自身、敬遠のボール球を8つ見守っているときに、準備できたんだろうとは思うんですけどね。ただ・・・

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