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東京2020オリンピック 金メダリストインタビュー

オリックス・吉田正尚(外野手)インタビュー「線になることを考えて」

 

全5試合で三番を担ってチームトップタイの7安打。決勝で貴重な追加点につながる一打を放つなど、チャンスメークにポイントゲッターと、攻撃の起点となった根底には、いつもと変わらぬ意識がある。「打順は考えない。考えたのは線になること」──。“選手ファースト”とも言われたチームだが、選手は皆“チームファースト”だった。
取材・構成=鶴田成秀 写真=Getty Images

アメリカとの決勝の8回。貴重な追加点につながる中前打を放った[写真=Getty Images]


日増しに膨らむ重圧も変わらない役割と意識


 金メダルを目指して戦う中で、当然、重圧はのしかかってくる。だからと言って、試合前の準備や打席へのアプローチを変えることはしない。求められる『役割』を理解しているからこそ、大きな重圧を感じながらも意識は『勝利』の二文字だけに置き続けた。

──五輪の舞台で背負った日の丸。重みも相当なものだったと思います。

吉田 ドミニカ共和国との初戦、そしてメキシコと戦って、準決勝、決勝と進めば進むほど、どんどん重みが増していきましたね。緊張感も増していって。体も今までにないような反応があったりして。

──体の反応ですか。

吉田 普段ないような感覚だったんです。うまく言葉で言い表せないんですが、プレッシャーからきたものなのか何なのか。疲れとは、また違うもので。プレーは普通にできたので、バッティングや守備に支障が出るものではなかったんですが、新しい感覚というか、今までにない体の感覚だったんです。緊張感もあったので、それも影響しているのかもしれないんですけど。

──重圧を物語ります。疲れではないと言っていましたが、前半戦→球宴→合宿、そして開幕と過密日程でもありました。

吉田 でも、意識はシーズンと変わらず。いつも大事なのは、体だと思っているので。疲れはなかったですし、体調の面は何の心配もなく入れたので、しっかりケアして、いい状態を維持する。それだけを考えていました。

──代表招集にあたって「求められている役割はオリックスとは違うかもしれない」ということも言っていましたが。

吉田 代表に合流するまでは、「これから」のことだったので。自分で役割を決めるのではなく、しっかりと求められていることを考えようという意味でもあったんです。ただ実際にチームに合流して、日本代表でも、オリックスでも(役割は)変わりませんでした。(三番の)打順的に一番(山田哲人)、二番(坂本勇人)が出塁してくれたら僕もつなぐ。塁にいなければ、僕がチャンスメークして、後ろにつなぐ。打順というよりも、線になることを考えていたんです。特に日本代表は、一人ひとりがスターばかり。「自分がどうしよう」ということではなく「線になる」こと。その1人になることを考えていました。

──迎えたドミニカ共和国との開幕戦の初打席でチーム初安打。個人としても幸先の良いスタートを切りました。

吉田 すごく大きかったですね。4打席目も1本出て、初戦で2安打できましたし。2戦目は・・・

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