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惜別球人 彼らの勇姿を忘れない

阪神・岩田稔 消えそうで消えない負けん気の投手

 

反骨心の中で、腕を振り続けた。1型糖尿病を高校2年生のときに患い、病とも戦いながら16年間、走り続けた。気持ちで投げるタイプで、縦縞の先発ローテを守り続けた。最後は、強い気持ちを使い切り、マウンドを降りる決心をした。
文=佐井陽介(日刊スポーツ)

2008年、先発ローテに定着して2ケタ勝利を挙げる活躍を見せた。このときが唯一、念願のリーグ優勝に近づいたときだった[写真=BBM]


 38歳の誕生日を目前に控えても、肩ヒジに不安要素は一切ない。ただ、もう心の“勤続疲労”が限界に到達していたのだという。

 10月1日、兵庫・西宮市内のホテルで催された引退会見。阪神岩田稔は時に大粒の涙をこぼしながら、うそ偽りのない本心を明かし続けた。

「昔ほど燃えてくるようなものがなくなっていた。この気持ちで、タイガースのユニフォームを着てプレーしているのは失礼だと思っていた。やり切りました。縦縞のユニフォームを着られて、本当に幸せでした」

 05年秋に入団してから16年間、走り抜いた。悔いはないのだろう。両目を赤く腫らし終えると、最後は澄み切った笑顔で会見場を後にした。

 09年WBCの世界一メンバー。長年にわたって先発ローテを支えてきた。一方で近年は若手の台頭もあって二軍暮らしが長引き、先発ローテの穴埋め、いわば「困ったときの便利屋」のような立場に落ち着いていた。

「自分は消えそうで消えないフェルトペンみたいなもんやから」。自虐ネタで周囲を笑わせながら、葛藤の毎日が何年も続いていた。

 昨季は一軍5試合登板でわずか1勝(2敗)。今季は・・・

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