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日本一チームドキュメント

東京ヤクルトスワローズ 徹底した「1点にこだわる」意識

 

パ・リーグ覇者のオリックスを激闘に次ぐ激闘の末に4勝2敗で下し、ヤクルトが20年ぶり6度目の日本一を手にした。就任2年目の高津臣吾監督に率いられたスワローズは、なぜ2年連続最下位から日本の頂点にたどり着けたのか。その強さに迫る。
文=菊田康彦、編集部 写真=毛受亮介、小山真司

11月27日の第6戦[ほっと神戸]で優勝を決め、キャプテンの山田哲人と主砲・村上宗隆に抱っこされ笑顔の高津臣吾監督


屈辱から始まる道のり


「あのぉ、本当に苦しいシーズンを過ごしてきました。昨年、一昨年と最下位に沈んで、非常に難しいシーズンだったので、喜びも何倍も大きいと思います。あの、すごくうれしいです」

 史上まれに見る接戦続きの日本シリーズを制し、優勝監督インタビューに答える高津臣吾監督の目は潤み、声は少し震えているように聞こえた。

 現役時代はヤクルトの守護神として4回出場し、すべて胴上げ投手になった日本シリーズの舞台で、今度は監督として日本一。その栄光への道のりは“屈辱”から始まっていた。

 就任1年目の2020年シーズンは、小川淳司前監督(現GM)が指揮を執った19年に続き、チームとしては2年連続の最下位。勝っても負けても、報道陣の取材に対しては努めて淡々と応じていた印象があったが、6月28日の巨人戦(神宮)後には珍しく感情をあらわにした。

「究極に悔しいですね。めちゃくちゃ悔しいです。これは忘れちゃいかんと思います、この12対0(での敗戦)というのは。しっかり心に刻んで、この悔しさを胸にまた戦いたいなと思います」

 高津臣吾は「反骨心の男」である。現役時代の2007年、突然の戦力外通告を受け、メジャー・リーグでのプレーを挟んで15年間在籍したヤクルトを退団。その後も韓国、アメリカのマイナー・リーグ、台湾、国内の独立リーグと渡り歩いて43歳まで現役を続けたのは「絶対に見返してやるっていう精神だけです。反骨心というかね。そこから先は悔しさだけで野球を続けていたようなもんですから」と話したこともある。

 今年のヤクルトのスローガンは「真価・進化・心火」。就任1年目の最下位は、持ち前の反骨心に火をつけた。さらに評論家による今シーズンの順位予想が、そこに油を注いだ。なにしろ予想の大半が今年も最下位。OBも含め、ヤクルトの優勝を予想する者は誰一人いなかった。

「正直に言いますと・・・

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