前半戦の首位独走から、激しい優勝争いを繰り広げた阪神。そのチームを盛り上げ、支えたのは新人3人のニューパワーによるもの。全員がNPBの新人特別賞を受賞したことでも分かる。その3人に集まってもらい、寅年の2022年、17年ぶりの優勝を目指すべく、その思いを熱く語ってもらった。 取材・構成=椎屋博幸 写真=矢野寿明(対談)、BBM 切磋琢磨できる存在
球団新人記録の24本塁打の佐藤輝明。10勝で阪神の新人左腕として1967年の江夏豊以来2人目の2ケタ勝利を挙げた伊藤将司。そして、新人としてはNPB史上3人目(阪神の赤星憲広&近本光司)の30盗塁で盗塁王に輝いた中野拓夢。球団の長い歴史の中でも、ここまでルーキーが活躍したシーズンはなかった。ただし、その初めてのプロ野球シーズン、優勝争いのきつい毎日が続いた。 ──2021年、優勝争いに欠かせない存在となった3選手でした。1年間プロの野球を経験してそれぞれの目標は達成できましたか。
伊藤 僕は2ケタ勝利(10勝7敗)という目標を達成したので、いい1年だったなと思います。
佐藤輝 伊藤さんは、最初に見たときから(2ケタ勝利は)行けると思いましたよ。僕自身の成績に関しては、いいことも、悪いこともあって、いい経験ができた1年でした。
中野 テルは、連続でノーヒットが続いていたときは苦しそうだなとは思ったけど、それ以外はあまり苦しそうには見えなかったよね。
佐藤輝 僕はあまり表情に出さないというか、いろいろと考えないようにしているというか、考えていないというか……そこが自分のいいところでもあると思います。
中野 テルらしいよね(笑)。僕は初めてのシーズンでしんどいことのほうが多かった。でも最初に思った以上の成績だったのでよかったかなと。
伊藤 しんどいというのは?
中野 ここまで連続で試合をすることは今までなかったから、体力的にも精神的にもきつかったね。
伊藤 僕も夏場は、思うように投げられないという感覚があった。多分、それは体の疲れが最初に出てきたからだと思うんだよね。勝てない時期もあったので大変だった。
佐藤輝 僕も何10打席もヒットが出ないときはしんどかったというのもありますし、まあ、楽しくはなかったです。打てるときは楽しいじゃないですか。でも打てないと楽しくない、そのまんまの感情だったですね。プロ入りまで、本当にここまでずっと試合があることはなかったので……しんどかったです。
中野 想像以上にきつかったよね。良い日もあれば、悪い日もあったから、悪い日の次の日は気持ちを切り替えないといけないなと。僕自身も打てない時期があったから、苦しかった。
伊藤 ただ、それぞれが苦しかったときに3人で話すということはなかった。特に僕は先発ローテに入っていたから、投手陣同士での行動だったしね。中野とテルとは本当に別行動だったよね。
佐藤輝 ピッチャーと野手が一緒になって話し合うということはほとんどなかったですよね。それに外出もしないし、ホテルでも1人が多かったので、とにかく気持ちを切り替えていこうという感じでした。
中野 まあ、何かしら1人でできる暇つぶしを考えて、気持ちの切り替えをやっていくしかない状況だったよね。逆に言えば、1人になって自分に向き合い、野球に向き合うことができたのは自分にとって良かったのかな、と思った。
伊藤 そうだね。ただユニフォームを脱いだら・・・
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