投じられた球は12球、うちストレートが10球、変化球が2球。3月25日の開幕戦で、エースたちが投げ込んだ1球目の結果だ。球界全体で12人しか得ることのできぬ開幕投手の誇りと重圧を綴る。 写真=佐藤真一(京セラドーム)、小山真司(東京ドーム)、榎本郁也(横浜) 【パ・リーグ編はこちら】 先発の明暗と異なる結果
阪神8-10ヤクルト(京セラドーム) 18時5分、試合開始。阪神は当初、
青柳晃洋の開幕投手を予定していたが、新型コロナウイルス感染のため、代役として前年の開幕投手・藤浪晋太郎を指名。それでも気負いはなかった。「昨年は2日前にすごく緊張したけど、今年は割と落ち着いて過ごせています」。紫一色に染められた真新しいグラブをはめたマウンド上の顔は、いつもと変わらなかった。
誰もが認める怪物ながら、課題は制球力。「やってくれるはず」いや「いきなり大荒れになるんじゃないか」とジキルとハイドの一面を誰もが不安視していた。第1球はヤクルトの一番・
塩見泰隆の内角にズバリ真っすぐ。「ズドーン!」というキャッチャーミットの音とともに球審の手が即座に上がり、「ストライク!」。いきなり156キロをたたき出した。
塩見には安打を許し、初回に1点を奪われたが、150キロ台の真っすぐにスライダーを有効に使い、7回7奪三振3失点。課題の制球は3四死球と、まずは及第点の内容。外角にしっかりコントロールされる150キロ台後半の真っすぐは圧巻だった。8対3と大量リードで後続に託し交代。「先発として最低限の仕事はできたのかな」と振り返った。
18時21分、ヤクルト先発の小川泰弘が投じた第1球はボール。捕手の
古賀優大は一番・
近本光司に対してインコースにカットボールを要求したが、真ん中高めに大きく外れた。
この日は左打者の内角を突くカットボールが機能せず、続く二番・
中野拓夢には真ん中高めに入ったカットボールをレフト前へ運ばれた。その後、左打者に対しては、内角のストレートと外のフォーク、チェンジアップで投球を組み立てることになるが、カットボールが威力を失ったことにより、左打者は、外に逃げる変化球に踏み込んで食らいついた。
結果は3回11安打4失点降板。左打者には10打数9安打と打ち込まれた。「早いイニングでマウンドを降りてしまって申し訳ないですし悔しいです」と小川。さまざまな球種を変幻自在に操る本来の投球が見られなかった。
しかし、この試合は先発の明暗が結果とイ
コールにはならなかった。ヤクルトは最大7点差をひっくり返す大逆転劇で、4年ぶりに開幕戦を勝利。連覇に向け、好スタートを切った。
エースの気迫
巨人4-2中日(東京ドーム) 5年連続、球団最多となる8度目の開幕投手。18時17分、巨人の
菅野智之は慣れているはずの大舞台で・・・
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