現役時代はヤクルトなどでプレー、投手コーチとして西武、ヤクルト、日本ハムで選手を指導した荒木大輔氏。28年に及ぶユニフォーム生活で印象に残っている外国人選手について語ってもらった。 取材・構成=小林光男 写真=BBM “日本仕様”のスイング
私が現役時代に対戦した外国人打者で最も強烈な印象として残っているのは、ランディ・バース(阪神)です。1985年、86年と2年連続三冠王に輝き、85年に猛虎打線の三番として阪神を優勝に導いた“史上最強の助っ人”。私がヤクルトに入団した83年にバースも来日しましたが、同年は8度対戦して7打数1安打と抑えています。しかし、徐々に進化。年を経るごとに手が付けられないスラッガーへと変貌していきました。
打率.350、54本塁打、134打点で三冠王となった85年、私は7月に一軍へ上がり、先発ローテーションに入りました。阪神が21年ぶりの優勝へ突き進む熱気の中でマウンドに上がりましたが、バースを打ち取るのは困難でした。もちろん対策は練りました。インハイを厳しく突いて、低めへ変化球を投げ込む。強打者に対するオーソドックスな攻め方でも対応されてしまう。
私は打者を圧倒するような剛速球を持っているわけではありませんでした。ボールを動かして相手のミスを誘う投球スタイル。でも、バースは体勢を崩して泳いでしまうようなことはない。しっかりタイミングを取ってスイングし、凡打でもたまたまボールの少し上をたたいてゴロになったという感じでした。だから、少しでも甘く入ればスタンドまで運ばれてしまいます。85年のバースとの対戦成績は9打数3安打でしたが、安打はすべてホームランでした。そういえば86年は1本だけ被弾しましたが、それは王(
王貞治、
巨人)さんに並ぶ日本記録の7試合連続本塁打の1本目でしたね。
広角に打球を飛ばして、無理に引っ張るようなことはしない。おそらく日本の狭い球場なら、そんなに強振しなくてもスタンドインできるという感覚だったんでしょう。でも、それはみんな分かっているけど、できない。打席ではつい力が入ってしまうんですけど、バースは見事に“日本仕様”のスイングをしていました。スイングスピードも速いというわけではありません。バットにうまく乗せて運ぶというようなスイングでしたね。選球眼もよく、ボール球にも手を出しませんでした。
そういえばバース対策を練る中で、スコアラーがこんなことを言ってきました。「バースは変化球待ちでも真っすぐに対応できるそうです」。阪神の誰かから聞いたのでしょう。これを耳にして度肝を抜かれました。普通、打者は打席で速いボールをマークする。変化球を意識していたらストレートに対応するのは困難です。しかし、バースは・・・
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