日本球界復帰1年目は4勝9敗という結果に終わった。好投を見せながら援護に恵まれないシーンは今季も見られる。それでも、この右腕が力を発揮するのはマウンド上のみではない。その背中、その言動で若いチームの成長を促す。 写真=田中慎一郎 
調子が悪いときも最少失点にまとめる投球術が光る。今後は勝ち星を重ねながらチームをけん引していきたいところだ
円熟味を増した投球術
あらためて、思う。故・
野村克也氏は言葉選びのセンスも秀逸だったと。今も記憶に残っている談話の一つが「マー君、神の子、不思議な子」。野村監督が率いたときもそうだったのかもしれないが、球団初のリーグ優勝と日本一を成し遂げた2013年シーズン。
田中将大の活躍ぶりは、まさに「神の子」だった。24勝0敗1セーブ。プロ野球史に燦然(さんぜん)と輝く成績を残した。
背番号18が登板すれば、相手が自滅することもあった。「彼が投げるときは(点を)なぜか取り返せる。そういう星の下に生まれてきたんだろうな」(故・野村監督)。名将でさえ説明できない出来事が多かったから「不思議な子」でもあった。
「不思議」は、また別の意味で、8年ぶりに古巣に復帰した21年シーズンにも当てはまった。23試合に先発し防御率3.01。先発としての役目を果たしたが、4勝9敗。13年はあれほど援護に恵まれた右腕が、打線の援護を受けられなかった。少なくとも1人で借金を5つつくる内容には見えなかっただけに、その結果は「不思議」だった。
そして今シーズンだ。神懸かっていた13年とは、また違う姿でスコアボードに「0」を並べた。5月10日の
ロッテ戦(
楽天生命パーク)、107球で完封勝利。完封は日本復帰後では初、13年7月9日の
日本ハム戦(東京ドーム)以来、9年ぶりだった。球団記録を更新する11連勝に貢献したレジェンド右腕は「やっぱりよかったです。気持ちいい」と喜びをかみ締めた。
最速は・・・
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