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変化球特集「落とす」を極めろ!

元パ・リーグ審判員 山崎夏生が見たフォークの凄み 「野茂のフォークは130キロ台ながら、リリースしたとき直球のように伸びてきた」

 

魔球の正体を知るには、一番近くで見ていた者の証言がもっともすごさが伝わってくる。パ・リーグで数々の名投手のボールを裁いてきた山崎氏が印象深いフォーク、スプリットを語る。
構成=滝川和臣 写真=BBM

力のある直球とフォークの2種類のみでパ・リーグを席巻した野茂


見分けが難しかった野茂


 最初に落ちるボールを語る前に、審判のジャッジについてお話ししましょう。「審判はプロが投げるスピードボールや、鋭い変化球をよく瞬時に判断できますね」と聞かれることがあります。これはそう難しいことではありません。審判は捕手のミットに収まるまで、両目でしっかり見るだけでいいんですから。焦ることはないわけです。トレーニングを積めば誰でもストライク、ボールの判定はできるようになります。プレートからホームベースまでの距離は18.44メートル。投手の指先からボールが離れて、捕手のミットに収まるまで約0.4〜0.5秒。打者は投手のリリースポイントから、だいたい半分の時点で、打つか、見逃すかを判断しなければなりません。ですから審判ほど選球眼はよくない。これがワンバウンドするようなフォークに手が出てしまう理由です。

 審判の目線の基本はトラッキングアイ。つまり、頭を固定して眼球だけを動かしてボールを追いかけます。年齢を重ねて動体視力が落ちると追い切れずに、頭が動いてしまう審判もいます。私も53〜54歳のころでしょうか、それを実感しました。きっかけは、日本ハムダルビッシュ有(現パドレス)です。彼の157、158キロのストレート、特にインハイのボールに恐怖心を感じるようになったのです。さらに彼が得意とする左打者のヒザ元に食い込むような150キロを超えるカットボールに目がついていかなくなった。そのとき自分の衰えを感じさせられたものでした。

 話を今回のテーマであるフォークに戻しましょう。私が29年の審判生活で強烈に印象に残っているのが野茂英雄(元近鉄ほか)です。本当にすごかった。18.44メートルの真ん中に来るまではストレートの軌道とまったく同じ。球速は130キロ台ながら、リリースしたときは直球のように伸びる感じが特徴的でしたね。そこから・・・

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