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最終戦力図2022 THE Breakers INTERVIEW

ソフトバンク・藤井皓哉インタビュー 投げられることの喜び 「すごく幸せだなって気づいた」

 

2020年11月4日、6年間在籍した広島東洋カープから戦力外通告を受けた。現役続行を決め、21年は独立リーグ、四国IL/高知でプレー。同年12月14日、育成選手としてソフトバンクのユニフォームに袖を通した。そして今――、右腕は2ケタ背番号を背負い躍動する。かつては力を発揮することのできなかった一軍のマウンド。そこに今は、自信を持って上がっている。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭

原点に立ち返って2度目のNPBの舞台へ。開幕からの登板数は広島時代の通算を優に超えた


原点回帰を経て


 広島を戦力外になったときから新たに始まった藤井皓哉の野球人生は、ソフトバンクに入団してまたガラリと変わった。入団後、春季キャンプ途中から一軍に合流し、オープン戦で結果を残して3月22日に支配下登録。開幕一軍入りを果たすと、8月21日現在、登板数は40試合に到達した。自らの活躍を「出来過ぎ」と語る右腕。だが、この活躍は右腕による努力の証しだ。

──8月13日のオリックス戦(PayPayドーム)で今季初めてとなる複数失点はありましたが、この1試合を除いては失点しても最小限度に抑えて安定した投球を続けてきています。その要因はどこにあると思いますか。

藤井 しっかりバッターを見て、どこで勝負したらいいのかを判断できているからですかね。そのバッター、そのバッターで、完璧に投げることってできない。なので、ミスしたときにも打ち取れるように考えているというか。例えば、このバッターは高めに抜けたとしても大丈夫とか、このバッターは高めは危ないからコース低めにしっかり投げ切ろうとか。厳しいコースにばかり投げようとしても、結局投げられないこともある。そのときに、どこなら許されるのか、どこは絶対ダメなのか、バッターごとに自分の中で整理しているんです。

──そのためには、これまでの対戦結果やデータなどが参考になってくる。

藤井 それももちろんあるんですけど、その日どんなバッティングをしているか、試合の中での反応も大事ですね。僕の場合は後ろで投げるので、先発ピッチャーがどういうふうに投げているのかというのを見て。先発ピッチャーの攻め方、それに対するスイングの仕方などを見て、イメージをふくらませます。そして、あとは投げられる状態をしっかりつくること。それが、この前のオリックス戦ではできていなかったので、打たれてしまったのかなというところはありますね。

──複数失点した試合は、いつもと違った感覚があったわけですね。

藤井 自分が考えていることに対して、体が、というか投球が思うようにできなかった。マウンドで少しバランス的なところでズレがあったように感じます。なので、そこは修正してやっていますね。

──開幕前に話を移しますが、支配下選手になって、会見では「これからがスタート」と語っていました。シーズンに向けてはワクワク、ドキドキ、不安……など、いろいろな気持ちがあったかと思いますが、何が一番大きかったですか。

藤井 『投げられる喜び』ですかね。広島カープのときは、投げたいのにマウンドに上がるとうまく投げることができなかったんです。それが、昨年高知に行って、投げる喜びを感じることができた。もともと投げることが好きでピッチャーをやっているわけで、好きなことをやっているんだから楽しんで投げようと。そういう感情の中で、投げていけばいろいろな課題も出てきます。でも、その課題に対して取り組めるということが、すごく幸せだなっていうのに気づいた。これを続けていきたいと思ってここ(ソフトバンク)に入りましたし、入ってからも同じ思いでいます。だから、支配下になって、投げられる喜びは、あらためてすごく感じました。

──広島時代、「投げたいのにマウンドに上がるとうまく投げることができなかった」原因というのは、振り返ってみてどこにあったと思いますか。

藤井 やっぱり二軍から上がってきた選手というのは結果を出さないと、また下に落とされてしまう。なので、そこが一番になっていたというか。結果ありきの投球になってしまっていました。もちろん結果は大事なんですけど、結果を残したいという欲が強過ぎて、うまくコントロールできなかった。ただ、独立リーグに行ったことで・・・

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