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高校生ドラフト特集2022 注目選手クローズアップ【甲子園出場組】

山田陽翔(近江高・投手)人生を変えた『15試合』 「今は投手としてのほうが、自信はあります」

 

2022年夏、強烈な記憶を残した。エースで四番、主将として鼓舞する姿に、ファンの心を熱くした。侍ジャパンU-18代表は初の世界一を目指すU-18W杯(アメリカ)を戦っている。背番号1は主将として、日の丸をけん引。チームのために全力を注ぐその先には、自身の夢である「運命の日」が待つ。10月20日のドラフト会議を控えた有力球児を追う。
取材・文=沢井史 インタビュー写真=牛島寿人

投げては甲子園11勝、バットでは高校通算31本塁打の豪快なスイングが持ち味。山田本人は野手より、投手として勝負したい思いが強い


「四番・ピッチャー・山田君」

 今夏、甲子園の場内アナウンスで山田陽翔の名前がコールされるたび、マンモススタンドは沸いた。試合前にブルペンでの投球練習が始まれば、周囲は人だかりになり、山田を追いかけながらスマートフォンのカメラを構える観衆でごった返した。

 山田によれば、準優勝した今春のセンバツ以降、電車通学の帰宅時は電車内で野球好きなサラリーマン、女子学生、野球少年に声をかけられる機会が多くなったという。降車後も「信号待ちをしているときに『写真を撮ってください』と言われたこともあります」と、熱狂ぶりを明かす。夏の滋賀大会でも近江高の試合になると、スタンドを多くの観客が埋めた。ゲーム後は球場外に出待ちするファンがあふれ、引き揚げるのもひと苦労するほどフィーバーだった。

 昨夏は4強、そして今春のセンバツは、京都国際高のコロナ禍の出場辞退による代替出場で準優勝を遂げた。山田は5試合594球の熱投も、大阪桐蔭高との決勝で惜敗。最後の夏も4強進出と健闘したが、滋賀勢初の全国制覇には届かなかった。

2年夏4強、3年春準優勝、そして、最後の夏は4強進出。準々決勝における高松商高のスラッガー・浅野[背番号8]との直接対決は、見る者を熱くさせた[写真=毛受亮介]


 なぜ、近江高が多くの支持を集めたのか。甲子園では劇的な展開が多く、投打でフル回転するその象徴が主将・山田。対戦校をリスペクトする姿勢など、純粋な受け答えを含め、心から応援できる存在だったのだ。

 2年夏から3季連続甲子園で計15試合を戦った。歴代5位タイの11勝は、1998年に春夏連覇を達成した横浜高・松坂大輔(元西武ほか)、2010年に春夏連覇を果たした興南高・島袋洋奨(元ソフトバンク)に並ぶ数字だ。115奪三振は歴代3位と、山田は甲子園の歴史にその名を残した。

「15試合、それぞれにストーリーがあって、どの試合が一番とかはない。語り出したら、キリがないです」

 屈託のない笑顔で語った山田。「甲子園はとても投げやすい場所」と、魂のこもった投球を見せ、大観衆が背中を押した。「近江は(甲子園の観衆に)すごく応援してもらっているなと、この夏は一層、感じました」。マウンドでは全力投球、そして打席では初球からフルスイング。1球に集中力を研ぎ澄まし、気迫を前面に出すプレーは見ている者を熱くした。

 夏にレベルアップを証明したのは奪三振率だ。準優勝のセンバツでは44イニングで33奪三振(6.75)。この夏は鳴門高との甲子園1回戦から、鶴岡東高との甲子園2回戦の6回まで14イニング連続奪三振をマークした。大会を通じて38イニングで51奪三振(12.08)と、最速149キロの直球で押すときもあれば、スライダーなどの変化球でタイミングを外すなど、投球センスの良さを見せた。

 今夏のハイライトは海星高との3回戦。7回裏に満塁のチャンスで打席が回り、バックスクリーンの旗を見て浜風の向きを確認した。「打ち上げれば(スタンドに)入ると思った」と、2ボールからの直球を思い切りたたくと・・・

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