週刊ベースボールONLINE

高校生ドラフト特集2022 注目選手クローズアップ【甲子園出場組】

戸井零士(天理高・内野手)勝利に徹する右の攻撃型遊撃手「人間性も高めて、プロで活躍したい」

 

覚悟を胸に、チームを背負うことで、人として一回りたくましくなった。夏2度、春1度の甲子園優勝を誇る名門での主将経験は大きな財産。相手を思いやるフェアプレーを学んだ。
取材・文=沢井史 写真=太田裕史

四番・ショートで出場した今夏の甲子園では2試合で8打数4安打。守って打てることを証明した


 甲子園をかけた今夏の奈良大会決勝。相手は準決勝で昨夏の甲子園準優勝校・智弁学園高を下した県立校の生駒高だった。試合前、相手校が非常事態であることを戸井零士はとっさに察知した。登録メンバー20人のうち、12人が変更していたのだ。

「自分たちは携帯電話を持っていないので、ニュース等は知らなかったのですが、状況を見聞きしていたら感染者が多く出ていることを知りまして……。自分たちも同じように新型コロナウイルスで苦しんだ時期がありました。でも、最後の夏にああいうことになった生駒高校さんのことを思うと……自分たちが感情を露わにすることは良くないな、と」

 プレーボール前、中村良二監督には全力で戦うことだけを伝えた。結果は21対0で、5年ぶり29回目の甲子園出場。主力選手の多くを欠き、生駒高の無念をくめば、喜びを爆発させることはできない。天理高の最後の守りとなった9回表二死。マウンドに集まった際に、相手をリスペクトする姿勢を全員で確認し合った。生駒高は天理高へ横断幕を贈り、天理高は生駒高ナインを甲子園アルプス席に招待。友情を深めた。9月11日には夏の決勝の舞台・佐藤薬品スタジアムで両校による“再戦”が実現した。中村監督の強い思いで、出場できなかったメンバーによる最後の“真剣勝負”が展開されたのだ。

「天理高校では『野球だけでは、技術はつかない』と、常日ごろから言われてきました。人間性を高めてこそ、技術は上がる。自分もずっと、そう思いながら取り組んできました」

指揮官が認めるリーダーシップ


 中村監督によると、入学時は突出した存在でなかった。大きく変化したのは、2年秋の主将就任後である。

「下級生のころは自分のプレーで精いっぱいというか、それに全力を尽くしていたんですけれど、キャプテンになってからはチームを優先して、周りを見ながらプレーしないといけないと思ってやってきました」

 自己犠牲心が飛躍のきっかけになったと、中村監督は明かす。

「当初は頼りないかな……と思っていたのですが・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング