優勝へのマジックは2。相手は2位のDeNA。勝てば優勝が決まる大一番は、両軍エースの快投で静かに幕を開けたが、最後には劇的なフィナーレが待っていた。


　先発マウンドに上がったのはヤクルト・小川泰弘とDeNA・今永昇太の両エース。小川が多彩な変化球を駆使して打者を翻ろうすると、対する今永は150キロ超えの直球をどんどん投げ込み、ヤクルト打線から三振の山を築いた。3回に山田哲人がチーム初安打の二塁打でチャンスをつくるも、続く四番・村上宗隆が倒れて先制点とはいかず。スコアボードには両軍ともに0が並び続け、いつ試合の均衡が破れるのか、緊迫した状況が続いた。


　両軍ともに無得点のまま試合は終盤戦へと突入した。ヤクルトは7回から二番手・石山泰稚を投入し、継投策へ持ち込む。依然、両者無得点の状況だったが、8回にはセットアッパーの清水昇、9回はクローザーのマクガフを投入。DeNA打線を完全に封じこんだ。開幕からチームを支え続けてきた強力リリーフ陣が、この日も圧巻の投球を見せた。


　両者無得点のまま迎えた9回裏、ついに歓喜の瞬間が訪れる。先頭のオスナが全力疾走で内野安打をもぎ取ると、塩見泰隆が代走で登場。スタジアムは一気にサヨナラ勝利を期待する空気に包まれた。続く中村悠平が犠打を一球で決めてチャンスが広がると、一死二塁の状況で打席には途中出場のルーキー・丸山和郁。「打つことに必死だった。打った感触だけで『よっしゃー！』と叫んでしまった」とエスコバーから放った一打は、ショートの頭を超え、左中間へ。二塁走者の塩見がサヨナラのホームを踏むと、ベンチにいたナインは一斉にグラウンドへ飛び出し、二塁ベース上のヒーローの丸山を手荒く祝福した。

　リーグ優勝決定試合で、新人選手がサヨナラ打を放ったのは史上初。昨季の日本一を知らない男の一打で29年ぶりのリーグ連覇を決めた。


写真=榎本郁也、高塩隆、桜井ひとし