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2022 PACIFIC LEAGUE CHAMPIONS

<10.2ドキュメント>オリックス・誰一人としてあきらめない 心を一つに最後の勝利をつかむ

 

オリックスにとって勝たなければ終わりのファイナルゲーム。先制を許しながら、鮮やかに逆転すると、自慢の中継ぎ陣が楽天の反撃を許さず、劇的なフィナーレを手繰り寄せた。


 10.2――。負ければ終わり、勝ってもチャンピオンフラッグの行方はライバルの勝敗に委ねられる。だが、誰一人としてあきらめてはいなかった。やるべきことは変わらなかった。中嶋聡監督が試合前の円陣で檄を飛ばす。「勝って終わりたいな? 優勝のことを考えるなよ!」。選手会長の吉田正尚は「円陣で心を一つにして臨んだ」と振り返る。

 最終決戦の相手は楽天、敵地・楽天生命パークで相手先発の田中将大を打ち砕かなければならないという難題が待っていた。だが、杜の都のエースは序盤から快調そのもの。3回までパーフェクトに抑え込まれてしまう。すると4回、先発の田嶋大樹がつかまった。2安打と四球で無死満塁のピンチを招くと、指揮官はたまらず比嘉幹貴にスイッチするも、ギッテンスに先制の2点適時打を許してしまう。ここで鮮やかな火消しを見せたのが三番手の宇田川優希だ。無死一、二塁から一死満塁となるも、無失点で切り抜け、ダメージを最小限で食い止める。

2点を先制された4回無死一、二塁でマウンドに上がった宇田川は鮮やかに火消しに成功。2イニングを無失点で抑えた


 すると直後の5回、ついに田中を攻略する。2安打と四球で無死満塁のチャンスをつくると、伏見寅威が反撃の狼煙を上げる適時打を放つ。さらに無死満塁から福田周平が値千金の2点適時打を左前に弾き返し、軽やかに逆転に成功した。

5回に反撃の狼煙を上げる適時打を放った伏見は9回にもダメ押しの適時二塁打を放った


1対2と1点差に追い上げた5回無死満塁から福田が決勝の2点適時打


 こうなれば指揮官が「ピッチャー陣の頑張りがなければ、ここまで来ることはできなかった」と全幅の信頼を寄せる自慢のリリーフ陣がモノを言う。宇田川が2イニング目の5回もゼロに抑えると、6、7回は山崎颯一郎、8回はワゲスパックが楽天打線に反撃の糸口さえ与えない。

6回からは四番手・山崎颯が2イニングをゼロに抑え、相手に反撃の糸口を与えなかった


 9回にはこの日、一軍昇格した杉本裕太郎が代打でチャンスを広げ、伏見がダメ押しの2点適時二塁打。最後は2年目右腕の阿部翔太が締めてマウンドで雄叫びを上げた。

9回を締めた阿部はマウンドで吠えた


試合に勝利を収めると、吉田正を中心に笑顔が広がった


 喜びの笑顔でナインがベンチに引き揚げた直後、ビジョンにはソフトバンク敗戦の瞬間が映し出される。笑顔は一転、歓喜の爆発へと様変わりし、誰もが弾けるように再びグラウンドへとなだれ込んだ。最大11.5ゲームの大差をつけられながら、143試合目に76勝65敗2分けで並び、直接対決の勝率でソフトバンクを上回ったオリックスの奇跡のような軌跡。昨年に続いてマジックを点灯させることなくたどり着いた頂。仰木彬監督が率い、イチローらを擁した1995、96年以来、26年ぶりとなるリーグ連覇を成し遂げた。

 5度、宙に舞った中嶋監督の目には涙が浮かんでいた。「こんなことが起こるのかと、信じられない気持ち。選手がここまで連れて来てくれた。本当にありがとうと言いたい」。だが、会見ではいつもの飄々と、淡々とした指揮官の姿に戻っていた。「日本シリーズに絶対に出たい」。昨年、果たすことのできなかった悲願へ。忘れ物を取り返すために。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ突破は、日本一への通過点だ。

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