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背番号物語2023 巻頭COLUMN

「51」をめぐる至高なストーリー「せっかく自分の背番号をみんなが覚えてくれたわけだから、それをわざわざ変えることはない」(イチロー)

 

イチローが着けたことで価値が高まり、あとに続いた選手は数知れない。巨人のドラフト1位ルーキーもその一人だ。背番号を“育てる”のは選手自身。「51」にまつわる物語には、まだまだ続きがある。
文=石田雄太 写真=Getty Images、BBM


道標となったマインド


 イチローと浅野翔吾はずいぶんと見た目が違う。水島新司さんの『ドカベン』ふうに言うなら殿馬一人がイチローで、浅野は山田太郎だ。なぜ浅野とイチローを並べたのかと言えば、ともに背番号が51だからだ。そしてそれは偶然の一致ではない。背番号51を希望した浅野は、イチローとは浅からぬ縁がある。

 高松商高からドラフト1位でジャイアンツへ入団した浅野は、身長171cm、86kgのスラッガーだ。175cm、85kgの“ドカベン”山田太郎よりもさらにひと回り小柄ながら50メートルを5秒台で走り、高校通算ホームラン68本はPL学園高の清原和博を超えている。そんな浅野は2021年12月、高校2年だったときにイチローを仰天させた。

「左打席で左方向にもこんなホームランを打てるの? 化け物ですね」

 イチローが見つめる中、浅野は左打席からレクザムスタジアム(香川県営球場)の左中間の芝生席へ、とてつもない飛距離の打球を弾き返した。しかも浅野は本来、右バッターだ。右の大砲として子どものころからホームランを量産してきた浅野は、スイッチヒッターに挑戦していたのである。そんな“にわか”の左で放った一打にイチローは驚愕(きょうがく)した。

 実はその日、イチローは高松商高の指導に訪れていた。主将の浅野はイチローとキャッチボールをして、バッティング練習を間近で見た。キャッチボールでは「上からたたくイメージを持って、全力で投げて低く、強い球を投げられる距離を保つ」ようアドバイスを受けた。球数は少なくていいから、投げた球がシュート回転やスライダー回転しないよう、理想の軌道で投げられる距離と形をつかんでほしいと伝えられたのだ。さらにケージに入ってバッティング練習を披露したイチローは、いつものように「フンっ」と唸(うな)るような声を絞り出しながら、凄(すさ)まじい飛距離の打球を外野席まで運んでいた。ただし、この日はいつもと違うことがあった。それは打ちながらイチローがしゃべっていることだった。例えば・・・

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