5月10日の阪神戦(甲子園)で今季初白星をマーク。入団から22年連続勝利のプロ野球記録に並んだ。入れ替わりの激しい『プロ野球』という世界において、なぜ石川雅規は第一線で投げ続けることができているのか──。その理由は磨き上げた技と変わらぬ真っすぐな思いにある。 文=長谷川晶一 写真=桜井ひとし 数字が証明するもの
北の大地に新たに誕生したエスコンフィールド北海道。今シーズンプロ22年目、球界最年長となった石川雅規は期する思いを抱いてマウンドに立っていた。
5月30日、交流戦が開幕した。ここまでチームは10連敗を喫していた。コンディション不良のため、主力選手が次々に離脱。投手、野手ともに、残されたメンバーたちが懸命に奮闘を続けていても、白星をつかむことができない。嫌なムードが辺りを支配する中で、交流戦を迎えた。心機一転、これまでのチグハグな流れを断ち切るには絶好の大舞台だった。
「何としてでも連敗を止めてみせる。チームのムードを変えてみせる」、そんな思いを抱いていたのは想像に難くない。
しかし――。今季初めて中6日でマウンドに上がり、7回を2失点で抑えたものの、味方打線の援護もなく、チームは1対2で敗れ、敗戦投手となった。これで、通算成績は184勝183敗。43歳の大ベテランならではの老獪(ろうかい)なピッチングを披露した。試合後、
高津臣吾監督も「石川はゲームをつくってくれた」とねぎらいの言葉をかけた。それでも、「結果がすべて。試合をつくることができなかった」と表情は晴れない。
これまでに184回も歓喜の瞬間を迎え、ほぼ同数の183回、悔しい思いを味わってきた。チームに184個の白星をもたらすと同時に、183個の黒星を献上してしまった。しかし、これだけの登板機会を与えられているということこそ、石川が長年積み上げてきた実績と信頼の証明にほかならない。
かつて、昭和時代のスワローズを支えた大エース・
松岡弘の通算成績は191勝190敗だった。この数字を受けて、松岡は「僕は《190敗》という数字を誇りに思う。これだけ負けても、まだ信頼されて投げさせてくれた。それを自慢したい」と語ったことがある。この言葉を石川に告げると・・・
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