週刊ベースボールONLINE

2023魅惑の変化球 SPECIAL REPORT

メジャー・リーグにおける野茂英雄とフォークボール

 

近鉄で5年間投げたのち、活躍の場をメジャー・リーグへ移した。独特のトルネード投法で全米のファンを熱狂させ、最大の武器であるフォークボールで強打者たちを封じ込めた。野茂英雄がその成績以上にメジャーで残した功績を考えてみる。
文=笹田幸嗣(スポーツライター) 写真=Getty Images

野茂英雄


天下無敵の魔球


 1995年。野茂英雄は全米に旋風を巻き起こした。日本からやって来た26歳の投手に対し、メジャーの並み居る強豪たちは三振の山を築いた。球種は真っすぐとフォークボールの2つだけ。カーブを投げることもあったが、それは猫騙しのような使い方に過ぎなかった。シーズンで奪った三振の数は256。新人でありながら奪三振王に輝き、三振奪取率11.1もトップ。トルネード投法とともに、野茂を一躍スターダムに押し上げたのは天下無敵のフォークボールだった。

 アメリカや中南米出身でもスプリット・フィンガード・ファストボールを投げる投手は多くいる。だが、野茂のように指を大きく開き、人差し指と中指で挟んで投げるフォークボールを投げる投手はいまだにメジャーでは稀だ。95年以降、フォークボールを武器とした投手は野茂のほかには佐々木主浩(マリナーズ)、千賀滉大(メッツ)ら、ほとんどが日本人投手と言っていいだろう。

 変化球。メジャーでは日進月歩の道をたどっている。スライダーはスイーパーへと進化系の道をたどり、球速や変化を微妙に変え、ダルビッシュ有(パドレス)のように11個もの球種を操るマジシャンもいる。それでもフォークボールと呼べる球を投げる投手はいまだに少ない。だからこそ“魔球”と呼ばれ、千賀のウイニングショットがアメリカでも“Ghost(お化け)”と評される所以だ。

 野茂がデビューした95年、ドジャースの同地区ライバルチームには当時のメジャーでも群を抜く屈指の強打者が数多くいた。ジャイアンツのバリー・ボンズ、パドレスのトニー・グインがその代表例だ。彼らもまた野茂の魔球に手を焼いた。

 野茂が現役時代に最も多く対戦した打者として知られるバリー・ボンズはMLB歴代最多の762本塁打を放った。対戦成績は・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング