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第94回都市対抗野球大会展望 東京ドームで熱戦展開!!

<TEAM CLOSE UP>日本製鉄鹿島(2年連続22回目・鹿嶋市/北関東第1代表) 土俵際に強い「鋼の結束力」【後編】

 

「世代交代」と位置づけられた2023年。若手選手が台頭する中でも、伝統のスタイルは継承されていた。過去に3回ある4強の壁を打ち破り、悲願の都市対抗頂点を狙っていく。
取材・文=前田恵 写真=菅原淳
【前編】はこちら

「黒獅子旗」奪取へのキーマン 山口直哉&金城伶於(投手)


左から山口直哉、金城伶於


勢いもたらす新人コンビ

「エース不在」と言われた2023年。オープン戦から、さまざまな投手起用を試みた。そこで結果を出したのが山口直哉、金城伶於の新人右腕2人だった。「速球よりは変化球を駆使して打ち取るタイプ」と語る山口。日本通運とのJABA日立市長杯の予選リーグで1失点完投勝利を収め、先発の一人として存在感を示した。しかし都市対抗一次予選にあたる日立製作所との茨城県大会第1、2代表決定戦では、2回までに4点を奪われ、立ち上がりの課題を露呈した(試合は2対6で敗退)。「ブルペンで球数を多く投げるなど、試合前の準備から試行錯誤した」。茨城トヨペットとの二次予選準決勝で7安打完封。成果を見せた。

 ルーキーの快投を見て「同期だからどうこう、という気持ちはなかったけれども、自分もチームの勝利のために頑張らないといけないと思った」と奮い立った金城。日立製作所との第1代表決定戦でショートイニングの先発・諸見里俊(国学院大)のあとを受け、5回2/3を投げた。4回に2点差を追いつかれ、その後もたびたびランナーを背負いながらも得点を与えず、味方の援護を待った。「常にピッチャー有利のカウントで勝負できたのが、崩れなかった要因」と振り返る。山口同様に「打たせて取る」ピッチングが持ち味。北関東二次予選の最高殊勲選手賞に輝いた。

 この2人の本戦での活躍が、チームの悲願である日本一には不可欠だ。マウンドに立つ以上、「自分が新人とは思わないようにしている」と山口。金城も「自分の役割をまっとうするだけ」と、フル回転に備える。

PROFILE
やまぐち・なおや●2000年10月17日生まれ。兵庫県出身。172cm78kg。右投左打。済美高では3年夏の甲子園で4強進出。京産大でもエースとして活躍。23年に日本製鉄鹿島入社。

きんじょう・れお●2000年9月15日生まれ。沖縄県出身。178cm75kg。右投右打。神村学園高では2年夏の甲子園出場。青学大では3年春、サイドスローに転向。23年に日本製鉄鹿島入社。

チームを支える裏方 若山蒼人(アナライザー)



足で入手するアナログ情報

 4年間の社会人現役時代は、アンダースロー投手。引退と同時に、前任者の推薦でアナライザーに就任した。ベンチ外の試合中、ビデオを撮影しながら、前任者とよくコミュニケーションを取っていた。そこが認められたのだろうが、初めは自分にできるかどうか迷ったという。

 シーズンに入ると、社会人のあらゆる大会に足を運び、他チームのデータを収集し、チーム内で共有する。投球のコースや球種、球速、打者のヒッティングカウントや打球コースといった情報はパソコンに打ち込みさえすれば、専用ソフトがデータを細かく計算してくれる。それでも実際に大会を見に行く理由は、ソフトも試合のビデオも与えてくれない、アナログ情報を仕入れるためだ。チームの雰囲気、どの選手が打てば盛り上がるか、どこでどの投手が準備したのか、打球に対する外野手の反応や守備範囲の広さ……など。「要は相手の弱点を見つける仕事」だと若山は言う。若山の目が、困ったときにチームを助ける選択肢を増やす。

 1日3、4試合ある大会に連日通い、夜遅くまでデータ整理に明け暮れる。そうして全国の各大会をはしごし、1カ月、家に帰れないこともある。それでも選手やスタッフに「ありがとう」「助かったよ」「お疲れさん」と言われれば、疲れは吹き飛ぶ。

 中島彰一監督には、「選手とスタッフの懸け橋になってほしい」とも言われている。スタッフ唯一の20代。選手により近い距離で、コミュニケーションを図る。アナライザーとしては、「まだまだ勉強中」(若山)だが、データと人柄でチームをつなぐ。

PROFILE
わかやま・あおと●1996年7月27日生まれ。広島県出身。188cm85kg。右投右打。崇徳高から中部学院大を経て、日本製鉄鹿島に入社。高校3年時に投手に転向し、大学でサイドから下手投げに。4年春に岐阜県リーグの最優秀投手に輝き、大学日本代表候補合宿に参加。4年秋には明治神宮大会出場。19年に日本製鉄鹿島入社。23年からアナライザー。
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