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第94回都市対抗野球大会展望 東京ドームで熱戦展開!!

<TEAM CLOSE UP>ヤマハ(5年連続44回目・浜松市/東海第2代表) 33年ぶりの「新たな景色」へ【後編】

 

過去3度の都市対抗制覇。最後に黒獅子旗を手にしたのは1990年である。東海地区の名門は5年連続の大舞台へ、万全の準備を進めている。
取材・文=杉園昌之 写真=矢野寿明
【前編】はこちら

「黒獅子旗」奪取へのキーマン 網谷圭将(外野手)



頭は冷静に、心は熱く

 今季は打線の核として、これまで以上に重責をひしひしと感じている。入社5年目。元DeNAのスラッガーは、気持ちを引き締めている。

「昨年の後半から『ヤマハの四番』を任されているので、それなりの責任と覚悟を持って臨んでいます」

 都市対抗予選でも、勝負強さを見せた。特に目を引いたのは、西濃運輸との第1代表決定トーナメント準決勝。1対1で迎えた10回裏二死一、二塁から、サヨナラ適時二塁打を放った。重圧のかかる場面でもどっしりと構え、投手心理を読んでいた。前の打席で三振していた同じスライダーに狙いを定め、ボールに逆らわず、逆方向へ。いつも右打席に立つときに意識しているのは「頭は冷静に、心は熱く」。長年、ヤマハで四番を務め、昨年まで打撃コーチを務めた佐藤二朗から学んだことだ。

「気持ちの持ち方などを教えてもらいました。以前の僕は頭で熱くなっていた」。シーズンを通して、泰然自若の姿勢を貫く。フォーカスするのは上下する数字よりも、増えていく数字。打率よりも打点、本塁打。何よりも重視するのはチームの勝利だ。

「プロは個人の数字を見られますが、社会人は勝ってナンボ。たとえ4打数4安打でも負ければ意味がない。都市対抗では四番として、試合の流れを引き寄せる打撃をしたいです」

 一発勝負のトーナメントに「次はない」と自らに言い聞かせる。2大会連続で初戦負けを喫しており、東京ドームでの悔しさを忘れたことはない。「1年に1度しかない舞台で、思いをぶつけたい」と、一振りに魂を込めることを誓っていた。

PROFILE
あみや・けいしょう●1997年10月3日生まれ。千葉県出身。184cm90kg。右投右打。小学3年生から野球を始め、中学生時代は千葉市シニアでは投手で郡司裕也(現日本ハム)とバッテリーを組んだ。千葉英和高を経て、16年育成ドラフト1位でDeNAに入団。18年限りで退団。19年にヤマハに入社し、1年目から都市対抗に出場した。今季入社5年目。

チームを支える裏方 吉村康平&中津川貴紀(トレーナー)


左から吉村康平、中津川貴紀


万全のコンディションを管理

 春先から夏前にかけてJABA大会、都市対抗予選と続くと、選手たちの疲労はピークに達する。2012年からヤマハに籍を置く中津川貴紀トレーナーの言葉には、実感がこもる。

「ケガを負った選手たちは都市対抗の本戦前までに復帰し、誰もが試合に出たいと思っているものです。それを手伝うのがトレーナーの仕事ですし、責任でもあります」

 目下の大きなミッションは、東海二次予選での出場がなかった主力選手を万全の状態で戦列に戻すことだ。本戦までに間に合う見込みではあるものの、焦りは禁物だという。

「再発のリスクを考慮しつつ、状態を上げていかないといけません」

 今年1月からチームに加わった29歳の吉村康平トレーナーは、先輩である中津川トレーナーの下につき、若手からベテランまで満べんなくコミュニケーションを取って仕事を進める。都市対抗を控え、主将・川邉健司から頼まれ、個人のトレーニングメニューをつくったばかりだ。プロ野球・西武でトレーナー補佐を務めてきた経験が、活きているという。

「自分から表立って何かをすることは少ないです。基本的にはあまり口を出さず、選手たちに求められたときに、助言するよう心掛けています」

 あくまで裏方の仕事に徹する。2人が望むのは都市対抗勝利。鬼門である初戦に向け、選手たちをベストの状態で送り出すことに全力を注ぐ。

PROFILE
なかつがわ・よしのり●1977年7月24日生まれ。静岡県出身。浜名高卒業後、医療系専門学校で理学療法士の資格取得。卒業後にトレーナーの資格なども取得し、2012年からヤマハ野球部のトレーナーに就任した。

よしむら・こうへい●1994年3月17日生まれ。埼玉県出身。了徳寺大卒業後、大学、高校でトレーナーを経験。21年は西武、22年はBCリーグの信濃グランセローズでトレーナーを務めた。今年からヤマハに在籍。
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