週刊ベースボールONLINE

2023大谷翔平 ホームラン伝説

<驚愕の本塁打論>エンゼルス・大谷翔平 成長と変化を遂げた至高の感覚「自分で思っていたよりもっと上の自分に出会えて──」

 

遡れば“幻”の一発が始まりだ。幼少期から投打の二刀流を続けてきた男は、本塁打への思いはさほど強くなかった。だが、成長を続ける中で意識が変わる。至高の感覚にたどり着いた今に至る、大谷飛翔のホームランストーリー──。
文=石田雄太 写真=Getty Images
※日付は現地時間、成績・情報は現地時間7月11日現在


中距離ヒッターの思い


 大谷翔平のホームラン人生は“幻の1本”から始まっている。

 小学生のころ、岩手県の水沢リトルリーグでプレーしていた大谷は、早くから頭角を現した。彼が小学3年生の秋のことだ。リトルリーグは主に5年生、6年生が出場するメジャーと、3年生、4年生が出場するマイナーの2つのクラスに分かれている。そのマイナーの試合に出ていた大谷は、盛岡で行われた県大会で、65メートル先のフェンスを越えるホームランを放った。しかも、その一発は試合を決める逆転サヨナラホームラン。チームの誰もが狂喜乱舞、普段は感情をあまり表に出さない大谷も珍しく大喜びでベースを一周、ホームインした。ところがその瞬間、主審が思いもしないコールをした。

「アウト!」

 何のことやら、誰も分からない。なぜアウトなのかと理由を求めると、審判はこう説明したのだという。

「打席から、足が出ていた」

 確かにバッターが片足または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合、アウトとするルールはある。これを厳密に適用することは審判としての職務ではある。しかし、この場面で子どもに対してアウトを宣告することが本当に審判のあるべき態度だったのか。野球が好きで、野球を楽しむ小学3年生が練習を重ねて初めて打ったオーバーフェンスのホームランだ。しかも逆転サヨナラの一発である。いくら公式戦だったとはいえ、あまりに大人げない。そんな顛末で、大谷が野球人生で初めて打ったホームランは幻となってしまったのである。

 その1本を取り戻そうとしたわけでないだろうが、その後、大谷はホームランを打ちまくる。リトルリーグでの通算ホームランは35本。これは今もなお突出した記録として語り継がれているのだとか……当時、水沢リトルリーグで事務局長を務めていた浅利昭治さんがこんな話をしてくれたことがある。

「岩手の県大会ではホームランダービーを行うんですが、翔平は・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング