黄金期を迎えたチームには必ず、経験を積んだベテラン選手たちがいる。彼らがさまざまな助言を与え、鼓舞する。それを若手、レギュラーたちが肥やしにして躍動する。2023年の阪神にもそういう存在の選手たちがいた。もちろん、来年以降も猛虎に欠かせない男たちばかり。彼らがいるからこそ、黄金期と呼べる日が近いのかもしれない。 写真=BBM ※2023年成績は9月28日現在 大山も「原口さんと糸原さんの存在は大きい」と。打つ打たないではない、大きな安心感でチームメートを包んでいた
ベンチの最前列。大きな声で鼓舞し続ける日々のほうが多かった。チーム在籍年数最長の男は、大病を克服し、誰よりも元気がある。必然的に誰からも頼られる精神的支柱となった。まだまだ31歳。猛虎黄金期をバットと声で、つくり上げていく。 二塁手の
中野拓夢が27個目のアウトをつかむよりも早く、一番乗りでマウンドへ突進した。ビールかけでは周到に用意したかぶりものとゴーグルで顔が隠れ、雄たけびを上げ続けたせいでガラガラ声。中継を見つめた誰もが「誰だ、アレは?」と目を凝らした。勝利の美酒の泡とともに誰よりはじけていたその男の正体は、
原口文仁だった。
準備とメリハリ。今という時を楽しみ全力で生きるということ――。歓喜の日にも随所で見せた、そんな「原口のすべて」を、今季の原口は自然体で仲間たちに伝えていった。原口の行動と言葉の一つひとつが、新たに
岡田彰布監督に導かれた若いチームを一つにしていった。
最後はグッチが!
プロ14年目(育成時代を含む)。31歳になり、縦縞をまとってきた年数は、同学年で同期の
秋山拓巳とともに最も長くなった。鍛え上げた体はオフを経てまたひと回り大きくなり、打撃にも確かな手応えを持って2月の沖縄・宜野座キャンプへ乗り込んだ。シート打撃、紅白戦、練習試合で立て続けにアーチを架けたが、競争に割って入ることはできなかった。就任後すぐに大山を「四番・一塁」と明言していた岡田彰布監督から、原口も早い段階で「右の代打の一番手」という“場所”を与えられ、シーズンへと突入していった。
直接交わした言葉は多くはなかったが、将からの期待はすぐに一つの形となって表れた。4月2日の
DeNA戦(京セラドーム)。4対2の8回二死で中野が四球を選ぶと・・・
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