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2023日本シリーズ総決算 猛虎日本一

<チーム・リポート>阪神 すさまじい「岡田マジック」試合を演出するかのように大胆に打った手

 

38年ぶりの日本一を引き寄せた見事なタクト。確かな眼力で先を読み、大胆な用兵術を駆使してチームを勝利に導く。阪神が「アレのアレ」を成し遂げることができたのは岡田彰布監督がいたからこそ、だ。
文=高原寿夫[日刊スポーツ] 写真=宮原和也、牛島寿人

日本一を決め、胴上げのためにナインの輪の中に入った岡田監督。充実の表情を浮かべている


サヨナラ勝利の呼び水


 すさまじい「岡田マジック」だった。4勝3敗で阪神がオリックスを下した結末を見た今、そう書き出すほかはない。

 関西の野球熱がそうさせたのか。異常とも言えるほど暖かい10月末から11月の気温の中で、阪神とオリックスの「関西決戦」は展開された。

 互いに死力を尽くしながら戦った結果、阪神の38年ぶり日本一が実現。それでも虎党はもちろん、オリックス・ファン、そして野球ファンも堪能できた日本シリーズとなったのではないか。

 陳腐な表現で申し訳ないけれど「岡田マジック」とするのは、あとのない真剣勝負の中で次々に、まるで演出するかのように大胆に手を打つ様子があったからだ。

 振り返れば、まず、それは11月1日の第4戦で飛び出した。4カ月半も一軍を離れていた湯浅京己を同点の8回、二死一、三塁のピンチで投入したのである。

 この試合は阪神が序盤に2点リードしたものの7回に佐藤輝明の失策から危機を広げ、同点に追いつかれていた。

 さらに8回、勝ち越される危機を迎えたのだが、ここに五番手で湯浅をぶち込み、それをしのいだ。これが呼び水となり、9回サヨナラ勝利に結びつけたのである。

「おお。湯浅が抑えれば流れは変わるとおもてた」

 岡田監督は平然と、自らの演出を認めた。翌2日の第5戦はさらに驚かせる。

 今度は2点ビハインドの8回、やはり五番手で投入する。湯浅はここを三者凡退で切った。するとその裏、阪神打線は一挙6点を挙げ、逆転勝ちするのである。「湯浅が投げれば流れは変わる」。これで阪神は3勝2敗と王手をかけた。

 だが、これだけでは終わらない。ここからはこちらの見立てになるが、京セラドームでの第6、7戦で岡田監督は大勝負に出ている。

 日本シリーズの場合、第1戦で投げた投手が中6日で第6戦、第2戦に投げた投手が同じく第7戦に投げるのが一般的だ。もちろん好不調を見ての変更などはあるが、オリックスはまさにこのとおりのローテーションで来た。

 第1戦と第6戦がエース・山本由伸、第2戦と第7戦が宮城大弥。阪神も1戦目と6戦目は一気にエース級の働きを見せた村上頌樹に任せたのである。

 だが阪神側は少し、違った。第6戦に、2戦目に先発した西勇輝をブルペン入りさせ・・・

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