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PLAY BACK快進撃 猛虎38年ぶりの日本一

<球団OB会長・川藤幸三に聞く>タイガース日本一の裏側 大切にした“裏の野球”「85年の日本一の時も四球や犠打を大切にしていた」

 

吉田義男監督を胴上げしてから38年――。OBとして待ちに待った2度目の日本一だった。今年も足しげく球場に通い、チームを見守った川藤幸三OB会長。選手として85年の日本一を経験している同氏に喜びの声を聞いた。
取材・構成=小林光男 写真=BBM

さまざま経験を積んで視野が広がった岡田監督。それが日本一への要因にもなった


若い選手たちと経験豊富な首脳陣


──38年ぶりの日本一を成し遂げ、球団OB会長として喜びもひとしおでしょうが、岡田監督に連絡はしましたか。

川藤 そんな他人行儀みたいなこと必要がない。岡田監督に「カワさん、優勝したからといって、そんなカッコつけて。今までの俺たちの関係は何やったんですか」と言われてまうわ。ただ、もちろんOB連中はみんな、喜んでいる。11月25日には4年ぶりにOB会も開催するから。お祝いも兼ねて楽しくやりたい。

──しかし、岡田監督は見事な采配でしたね。

川藤 岡田監督は前回の阪神監督時(2004〜08年)には選手任せだったけど、今回は例えば一番の近本(近本光司)にフリーで盗塁を狙わせる以外は、すべてサイン。あらゆる作戦はすべて監督の責任やという形でシーズンを戦ってきた。このやり方が今の選手にマッチしたと思う。

──岡田監督が15年ぶりに阪神監督に復帰した今季。シーズン前、川藤さんはここまでうまくいくと思っていましたか。

川藤 今季は一番の年寄りでも33歳(西勇輝二保旭)。そんなチームは過去にあるか? 若さの勢いに乗ったときはいいけど、逆境のときにどうなるか。そこが不安やったけど、よくよく考えてみたら違うわい、と。岡田監督は12球団最年長の65歳。他球団の監督が若返りを図る中で逆行しとったけど、年輪を重ねた経験がある。ほかの首脳陣もそうや。若いもんだけが時代を変えていくわけではない。前の世代の経験も必要なはず。シーズン前には巨人・原(原辰徳)監督も言うとったわ。「若い人へ教えていくのも僕らの仕事」と。

──経験則から導かれた野球観の一つとして「四球はヒット1本と同じ」と考え、四球の重要性を選手に植え付けました。

川藤 今の打撃ってフルスイング。マン振りが主流や。確かにそれはいいこと。だけど、チームとして戦っていく中で、なんでもかんでもマン振りして「自分は気持ちよく振って三振したからいいです」ではダメ。自己満足で終わってしまう。そうではなく、選球眼のありがたさ。それを選手に感じさせ、教え込んだのは岡田監督や。

──85年、破壊力抜群の猛虎打線で日本一に輝いたときも“四球の重要性”はチームに根付いていたのでしょうか。

川藤 それはランディ(ランディ・バース)を例に挙げると分かる。助っ人っちゅうのは、自分のお金に絡んでくることをしたい。打者ならホームランや打点。投手は打たれたくないからボール球が多くなるけど、打って稼ぎたいからそれに手を出していく。

──そうなると打撃が崩れますね。

川藤 あるときランディが「なんでボール球ばかりなんだ。日本の野球ってなんなんだ」とモヤモヤがたまっとった。それでワシは言ったんや。「なあ、ランディ、相手はお前にホームランを打たれるのが怖いからボール球ばかりなんや。だからと言ってそれを振るのは自分勝手。もう少し冷静になろう。後ろの打者を考えろ。掛布(掛布雅之)、岡田、佐野(佐野仙好)と続いていく。いい打者がそろっているやろ。四球1個で彼らにチャンスが回るんや。それに掛布が打ち、岡田が打ちとなると、自然とお前と勝負するようになる。そしたら、そのときに打ったらええねん」と。それが三冠王につながった。要は自分自身の考えではなく、その1球がどう影響していくか前後左右を見渡す。それは85年も今年も一緒や。

日本一の原動力は見事な組織力


──今年の四番・大山悠輔選手もリーグ最多の99四球で最高出塁率(.403)のタイトルを獲得しました。

川藤 大山はホンマに四球を選ぶ男になったな。今年のオープン戦では最後まで打率1割台で「シーズンは大丈夫か?」とマスコミに騒がれていた。それでワシはオープン戦最後の京セラドームで大山に言ったんよ・・・

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