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制度開始から30年 FA最新事情

小笠原道大(日本ハム-巨人-中日)インタビュー 史上最高のFA選手「活躍できる場所を自分で探す」

 

FA移籍1年目(2007年)にシーズンMVPに選出されたのも、リーグをまたがった2年連続MVPも、史上唯一。しかも、前年まで4年連続V逸していた巨人を、FAで加入した途端に3連覇に導いた。歴代最高のFA選手と言える小笠原道大氏に、「FAとは何か」を聞いた。
取材・構成=落合修一 写真=BBM

2006年に日本ハムでパ・リーグMVPを獲得した小笠原道大は07年に巨人へFA移籍し、巨人でもMVPに選ばれた


プロ野球選手の価値を他人が評価する方法


──フリーエージェント(FA)という制度は、選手にとってどのようなものなのでしょうか。

小笠原 人それぞれの考え方がありますが、基本的に、働き盛りの選手はトレード以外にほかのチームへ移籍することはないと思うんですよ。10年近く一軍でプレーしてFAの権利を得た場合、ほかのチームでトライしたいという気持ちが出るのはある意味、自然なことのように思えます。あとは単純なビジネスと言うか、交渉の中でより高みを目指すためにFAを使う選手もいるでしょうね。

──プレーしながら、「あと何年で自分はFAだ」と気にするものなのですか。

小笠原 段々、ですね。新人のときはそんなことを考えていませんが、一軍に定着して何年かすると、残り何年で取得というのが見えてきて、現実的に「チームにおける自分の現状」を考えるようになります。

──FAの権利を取得する選手はだいたい30歳前後で「脂が乗った」ときですよね。やはりそういうときだからこそ、高く評価されたい、と思うものですか。

小笠原 プロ野球において、自分の価値を世の中の人がどのように評価してくれるのかというのは、一つにはお金になってきます。実際に、金額を提示される中で、球団同士の競争となり、資金力のある球団がどうしてもその選手を欲しい場合、多めになります。例えばですけど、経済的な余裕のないチームに所属する選手が活躍しているのに年俸を抑えられた場合、ほかのチームならどうなのだろうと思うこともありますよね。

──お金を多くもらえるならそちらを選ぶのは人間なら自然なことだと思いますが、感情的なファンは「お金に目がくらんだ」みたいなことを言ったり、出て行かれた球団のファンは「裏切り者」と言ったりすることもあるかと思います。そこはどう考えますか。

小笠原 FAで出て行く選手が「卒業」という言葉を使うこともあります。できることはやり切って、そのまま居続けても目標を見失うこともあるでしょう。そう考えたときにFA移籍という選択肢もありますよね。それは「裏切り」ではありません。ファンの人が全員そう言うわけではないですし、「どこのチームに行っても応援する」という方もいるでしょう。一歩引いて、見てもらいたいですね。

──小笠原さんの場合、日本ハム時代は毎年のように「3割、30本」を達成するレベルになり、打撃タイトルを何度も獲り、日本ハム最後の06年は優勝してMVPにもなった。やはりそこで「できることはやり切った」と思ったのですか。

小笠原 僕が移籍したのはそれだけではなくいろいろなことがありました。まずチームの北海道への移転というのがあって(04年)、優勝するまでチームに尽くそうと思ったら移転3年目に優勝した(06年)。その年はMVPにもなった。じゃあ、次は、と考えると、やり遂げた達成感はありましたよね。一つの目標をクリアしたというか。

巨人のプレッシャー? 考えてもしょうがない


──もともと、関東で生まれて東京のチームに入団したのに、チームが北海道に移転した。東京のチームに戻ろうかと思うのも自然なことのように感じます。

小笠原 ただ、結果的に東京のチーム(巨人)に入りましたけど、ほかのチームでも良かったんです。FAした時点では12球団すべてウェルカムと思っていました。でも、なかなか手を挙げてくれるチームはなかったんですが。

──巨人と日本ハム以外に、交渉しようという球団はなかったのですか。

小笠原 なかったです。新聞紙上で、どこどこが興味を持っていると書かれたこともありましたけど、実際に連絡が来たわけではありません。ジャイアンツだけでしたね。

──ご本人の口からは言いづらいでしょうけど、年俸が高過ぎて巨人しか手が出なかったのでは。

小笠原 どうなのでしょう。それぞれの球団の当時のチーム事情や・・・

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