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2024オリックス 投手王国新時代

<EPILOGUE&PROLOGUE>オリックス・満身創痍、涙の夜──歓喜と苦杯を味わって「まずは心も体もリセットして、自分たちが動きたくなったときに、しっかり動いてくれたらいい」(中嶋聡監督)

 

流した涙の意味は来季に示すほかない。故障者が相次いだ日本シリーズ、満身創痍のナインが懸命に頂点を目指すも連覇はならず。歓喜の日本一から1年、またも味わった苦杯は、来季への活力だ。浸透した『全員で勝つ!!』は、言い換えれば『相乗効果』を生むチーム。たぎる思いはナインに波及している。
取材・文=鶴田成秀 写真=佐藤真一、BBM


明日を変えるため


 7戦63イニング、計24時間5分──。濃密な日本シリーズは敗戦で終幕も、スタンドから惜しみない歓声が監督・コーチ、選手に注がれた。右翼スタンドだけでなく、黄色に染まった阪神ファンが沸く左翼スタンドに頭を下げ、ベンチに引き揚げた中嶋聡監督が、ファンの思いに胸を打たれたのは想像に難くない。赤くなった目で一点を見つめながら口にする。

「悔しいですよね。負けて終わるのは2回目ですけど。勝って終わるのと、負けて終わるのでは、全然違いますよね」

 リーグ優勝も吹き飛ぶほどとも言った悔しさは、結果のみならずチーム状態も無関係ではないだろう。主砲・杉本裕太郎がCSで左足首を痛め、首位打者を獲得した頓宮裕真は左足の指を疲労骨折。ベテランの二塁手・安達了一も右ヒラメ筋の筋損傷、遊撃手・紅林弘太郎も左手の薬指を痛め、セットアッパー・山崎颯一郎は左腸腰筋痛と、約6カ月にわたる長いシーズンを戦い抜いたナインは満身創痍。それでも心の火は消さず、それどころかより熱くグラウンドに立った面々に、周囲が触発されないわけがなかった。

「ラオウさんの覚悟、知っていますから」

 2勝3敗、阪神に王手をかけられて迎えた日本シリーズ第6戦の2回。左翼フェンス手前まで運ぶ勝ち越しの犠飛を放った中川圭太の言葉は・・・

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