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新年始動!! 2024ドラフト特集 注目大学生CLOSE-UP

宗山塁(明大・内野手)『人間力野球』の体現者「1年間、成長できる時間がある。慢心せず、できることをやりたい」

 

1910年創部の明大野球部は、技術向上の前に、人としての力をつけることに注力する。寮生活に妥協はない。全部員が一つ屋根の下で同じ釜の飯を食べ、ごまかしは通用しない。人間力野球。広陵高に続いて主将のリーダーが常に冷静沈着なのは、安定した取り組みが裏付けにある。
取材・文=岡本朋祐

打率5割、5本塁打、15打点で三冠王を目指す今春に向け、調整に余念がない。シーズンを通して好不調の波をなくすのが課題である[写真=BBM]


本塁打ゼロの理由


 なぜ、宗山塁は「20年に一人の逸材」と言われるのか。東京六大学の遊撃手で、2000年から03年まで在籍した早大・鳥谷敬(元阪神ほか)を彷彿とさせるからだ。4年間で歴代9位の115安打。遊撃手部門のベストナインは2年春、3年春から4年秋まで4季連続の計5度受賞した。2年春(三冠王)、4年秋に首位打者を獲得し、通算打率.333、11本塁打、71打点。右打ちの遊撃手では03年から06年まで在籍した法大・大引啓次(元オリックスほか)が歴代5位の121安打(遊撃手では歴代1位)、2度の首位打者、ベストナイン5度と神宮に足跡を記した。「左打ちのショート」に絞れば、鳥谷が「平成No.1」の実績を残したことになる。

 時代は令和。広陵高から入学した2021年、宗山は1年春、法大1回戦で三浦銀二(DeNA)から右越え本塁打を放った。神宮デビューから3試合目、5打席目での初安打。明大では入学直後のリーグ戦から、起用されるのは珍しい。宗山が抜てきされた理由は、安定感のある守備力があったから。過去の2試合は途中出場。法大1回戦では3回裏の守りから入り、5回表の打席で初アーチ。次打席でも右前打を放ち、翌日の法大2回戦からは遊撃手の先発に定着。鉄壁の守りで得た信頼感から、不動の定位置の座をつかんだわけである。

 1年秋に打率.378で初のベストナインを受賞。2年春は打率.429で首位打者、同秋も打率.354で春秋連覇に貢献し、1年秋から3季連続でベストナインを受賞している。2年秋までに61安打。リーグ歴代1位の明大・高山俊(オイシックス)の131安打のリーグ記録更新に、早くも注目が集まった。高山の2年秋までに53試合で62安打に対して、宗山は45試合出場。コロナ禍のリーグ運営で1年春、秋は勝ち点制(2勝先勝)ではなく、10試合のポイント制で開催。その物理的な背景も感じさせない量産ぶりであった。

 3年時はやや“停滞”した。2年時は春秋で41安打、打率.394、7本塁打、28打点の一方、3年時は春秋で33安打、打率.317、0本塁打、9打点。明大として85年ぶりの3連覇を遂げた3年春は、規定打席に到達して以降、初めて打率3割を切った。3年秋は開幕2カードで打率.579と好発進するも、残る3カードで打率.206と好不調の波が激しく(最終的には打率.340)、チームも85年ぶりの4連覇を逃した。宗山は自己分析する。

「どんな当たりでも安打になっていたんですが、しっくりきていませんでした。小さな誤差ですが、バットがスムーズに出ず、自分のポイントで打てていなかった。本塁打が出るのは、一番、良いスイングができたとき。昨年1年間、ゼロだったということは、思い描いたスイングができていなかった証拠です。あくまでも、ヒットの延長が本塁打。理想のスイングができれば、長打も出るという考えです」

 3年秋までに通算94安打。この冬、宗山はスイング改良に着手している。12月末には2泊3日で、母校・広陵高の練習に参加した。シート打撃ではプロ注目右腕・高尾響(3年)から、ファーストスイングで右越え本塁打。継続して取り組んできた成果を出し、良いイメージで年越しした。

侍ジャパンの「三番・遊撃」


 2023年10月26日。ドラフト会議で主将・上田希由翔(ロッテ1位)、左腕・石原勇輝(ヤクルト3位)、右腕・村田賢一(ソフトバンク4位)が指名を受けた。明大からの指名は、最長を更新する14年連続である。宗山は島岡寮の自室で、1年後に控えた「運命の日」を、メディアを通じて見守った。

「希由翔さんとは同部屋で(寮内の食堂で行われた)記者会見が終わるのを待っていました。3年間、一緒に取り組んできた先輩がプロ入りしたのは、素直にうれしかったです。ただ、その一方では危機感というか、時間が全然ないな、と。次は自分の番。(ドラフトイヤーが)始まったなという感じで受け止めていました」

 宗山は2年秋に「22年のドラフトでも1位」、3年秋にも「23年のドラフトでも1位」と、複数球団のスカウトは本気で語っていた。広島苑田聡彦スカウト統括部長は「打撃では頭がブレないから、スピード、変化球にも対応できる。足、肩、守備も申し分ない。獲得できれば15年はレギュラーを任せられる」と、地元選手に惚れ込んだ。また、昨年6月、大学日本代表候補合宿を視察した日本ハム稲葉篤紀GM(24年から二軍監督)は・・・

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