長く厳しい戦いが再び幕を開ける。変わり続けるチームにあって、選手会長を務める背番号99も、レギュラーの確約はないが、ライバル心は皆無だ。共闘する“仲間”とともに再び頂へ。ケガに苦しんだ満身創痍の秋を経て、あの夜の光景をもう一度、見に行く。 写真=川口洋邦 まさかの失速 脳裏に焼き付く打席
3連覇の中心選手も、ウカウカしていられない――。選手会長を務める杉本裕太郎が2024年シーズンも突っ走る。
中嶋聡監督が正式就任した21年からチームの『核』となり、同年は32本塁打を放って本塁打王とベストナインに輝いて25年ぶりのリーグ優勝に導き、3連覇に大きく貢献してきた。だが、今季は“勝負の年”となる。オフに
広島から国内FA権を行使した
西川龍馬が加入。新助っ人のトーマスら“新顔”もそろう。宮崎での春季キャンプで必死に汗を流し、体重6kgの減量にも成功した。リーグ4連覇と日本一奪還を目指すチームなだけに競争は激しいが「自分も野球がもっともっとうまくなれるチャンスだと捉えて、みんなで切磋琢磨していけたらなと思います。そうすれば、全体のレベルも上がってまだまだ強くなるんじゃないかなと思っています」と語気を強める。
とはいえ、ライバル心はない。新シーズンへ向け、笑顔が絶えないのは、尊重し合える仲間という思いがあるからだ。
「今年もたくさんの新しいメンバーが入ってきましたけど、良い雰囲気でプレーできていると思います。僕の仲間は『リスペクトできる人たち』なので、本当に良い刺激になります」
ただ、自分に目を移せば、悔しさを胸に秘めてオフを過ごしてきた。昨季、
ロッテとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージの最終戦(京セラドーム)で左足首を負傷。自力で歩くことができず、松葉杖をつく生活に「もうダメだと思った」のが本音だった。だが「どうしても日本一になりたかった」と懸命に前を向き、
阪神との日本シリーズ第5戦(甲子園)では、グラウンドに戻ってきた。対戦成績3勝3敗で迎えた運命の第7戦。劣勢の展開で、9回二死から打席が回ってきた。
「目の前で頓宮が打った瞬間に『確信』できるホームランを打っていたので、僕もつなぎたい打席。ホームランは狙っていませんでしたけど、どうしてもゲームセットが嫌だったので、後ろのバッターに(打席を)回せるようにと考えていました」
打席に入ると、「9回二死から、(頓宮の)あの一発は正直にヤバかった」と直前で飛び出した頓宮の一撃が“残像”として脳内に刻まれていた。だからこそ、手応えと結果の不一致に現実を知る──。
阪神の守護神・
岩崎優の投球を完璧に捉えると、白球は左翼スタンドを目掛けてグングン伸びる。痛めていた左足を、やや引きずりながら打球の行方を追った。
「打った瞬間の手応えは完璧。正直『スタンドまで行った』と思っていました。だから入った! と思っていたんです。でも、全然、打球が飛んでいなかった。ちゃんと捉えた感じだったんですけど、実際のところは足が踏ん張れてなくて、力が全然入っていなかったんだと思います。目の前で頓宮が『バコーン』と放り込んで、勢いとしては自分も続いたつもりでした」
左翼・
ノイジーが白球をつかんで試合終了。関西ダービーとなった日本シリーズは、第7戦までもつれたが・・・
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