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<FOCUS ON 膨らむ期待>ヤクルト・村上宗隆 三冠王に向かって「変えても立ち戻ることはできる。変えたあとにどうするか」

 

「チームの勝ちに直結するポジションだと思っています」2020年、最年少で全試合四番出場を果たしたシーズン、本誌インタビューにて、四番打者のイメージをこう答えた。チームと自身の停滞を打破することができなかった23年。悔しさと経験を持って一冬を越えた男は、ますますパワーアップしてグラウンドに現れた。
取材・文=小林篤 写真=桜井ひとし、兼村竜介


進化を求めたあまり自分を見失うことに


 試合開始の4時間前。無人の外野席に打球が次々と飛んでいく。座席にぶつかるガコンという鈍い音。フリー打撃でその音を奏でるのは村上宗隆だ。フェンスギリギリの柵越えはほとんどない。何度もスタンドに吸い込まれる。また大きな当たりが放たれた。今度は着地音が聞こえない。打球は神宮球場のバックスクリーンを越えていった。

 そして迎えた3月17日のオリックスとのオープン戦(神宮)、6回一死二塁。外角高め直球を振り抜くと、右翼席上段に届く特大の本塁打を放ってみせた。7年目のシーズン、今年はひと味違う気配が漂う。

 昨年の10月18日。村上への合同取材が行われた。場所は埼玉・戸田市、球団施設内の一室。下半身のコンディション不良のため、リハビリ組に合流していた。トレーニングウエア姿で現れた村上はシーズンを振り返った。そして言った。

「自分を見失わずにしっかりシーズンを送ることができれば、必ず結果はついてくると思う。来シーズン、しっかり活躍できるプランも見えています」

 手にしたものは1年ですべて失った。56本塁打、134打点、打率.318で史上最年少三冠王を成し遂げた2022年から一転、23年は無冠。成績は31本塁打、84打点、打率.256と前年を大きく下回った。4月終了時点で打率.157、2本塁打。チームも自身も浮上のきっかけをつかめず、苦しい戦いを強いられると、9月2日に優勝の可能性が消滅。14日にはクライマックスシリーズ進出の可能性も消えた。リーグ3連覇を目指すも83敗を喫し5位に沈んだ。

 打てなかった理由を分析する。「こうやったら打てるんだ、という『自分の居場所』はもちろん分かっていましたけど、それ以上にレベルアップをシーズン中に求めてしまった。それはオフシーズンにやることだったなと思っています」。

 ライバル球団が策を講じる中で、それを上回ろうとする。現状維持をよしとせず、戦いの中でさらなる進化を求めたことが、結果的には裏目に出た。

 合同取材から約2カ月後の12月12日。契約更改交渉後の会見で、再びシーズンを振り返った・・・

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