宮崎の地で育った野球少年は、音楽に目覚め、アメリカ・ニューヨークで腕を磨き、DJとしての地位を確立した。そして今、東京ドームを音楽で彩り、スタジアムの一体感を生み出している。 取材・文=杉浦多夢 写真=桜井ひとし DJ SOULJAH
DJとしての矜持
ナイターであれば午後2時から開始される
巨人の試合前練習。バックネット裏に設置されたターンテーブルの前に立つ男の手によって、東京ドームはまるで「ライブ空間」と化す。
2022年に東京ドームがメインビジョンや音響を含めた過去最大級のリニューアルを行ったタイミングで、スタジアムDJとして迎え入れられたのがDJ SOULJAH(ソルジャー)だ。1999年にアメリカ・ニューヨークに渡って腕を磨き、本場で高い評価を受けた「サムライDJ」が、巨人のホームゲームを「音」で彩っているのだ。
巨人が長く春季キャンプを張っている宮崎の出身。自身も物心ついたときにはバットを握っていた野球少年で、幼いころには当時の
長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)に頭をなでてもらったこともあるという。小学生時代はプロ野球選手にあこがれて野球に打ち込んでいたが、中学時代に肩を痛めたこともあり、野球から音楽へとシフト。着用するユニフォームの背番号『95』は、本格的に音楽を始めた1995年に由来する。常に初心を背中に刻んでいるというわけだ。
ニューヨークで見た忘れられないシーンがある。2009年、
ヤンキースのワールド・シリーズ優勝パレード。「五番街の摩天楼に紙吹雪が舞う中での盛大なパレード。その先頭にシリーズMVPに輝いた
松井秀喜さんがいて、『MVP
コール』が沸き起こる。エンターテインメントの度合いが違うと思いました」。アメリカではMLBをはじめとする4大スポーツが生活に密着していた。そして、スポーツのスタジアムにDJは付き物。スポーツと音楽がエンターテインメントとして融合するのは当たり前だった。だからスタジアムDJの依頼があったときも、自分の中ですぐにイメージが湧いた。
一口に「スタジアムDJ」と言っても、手掛けていることは多岐にわたる。試合前練習やイニング間、試合後のBGMを筆頭に、試合開始直前にはDJタイムが設けられており、球場の外に流れるBGMの選曲も担う。イニング間イベントもある。その上で・・・
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