2024年夏を戦う高校3年生は、遊撃手に好素材が集まる。17年以来の全国制覇を狙う花咲徳栄高のショートストップは「ドラフト1位」でプロ入りすることが目標である。打って、守って、走れる万能選手。自身初の甲子園の土を踏むため、激戦区・埼玉で持てる力を発揮していく。 取材・文=上原伸一 写真=斎藤豊 右の強打者は巨人・坂本、カブス・鈴木にあこがれている。日本ハム・野村、ソフトバンク・井上が同校に在籍していたことが、進路の一つの決め手となった
プロで戦うための英才教育
中学時代から目指していた、高卒でのプロ入り。その自信がうっすらと芽生えたのが昨秋の関東大会(栃木開催)、横浜高との1回戦だ。初回、石塚裕惺は98メートルのフェンスを悠々と越えるレフトへの2ランを放った。「高卒で行けるのでは……確信ではないですが、そう思えた、自分の中では価値あるホームランでした」。
実は関東大会の前は、不安にかられていたという。
「県大会では(関東大会進出をかけた準決勝で2ランを含む2安打5打点をマークするなど)ある程度数字を残せて、注目してもらえるようにもなったんですが、関東で打てなかったら……と。少しネガティブな気持ちになっていました」
石塚は常総学院高との準々決勝でも3安打。チームは敗れたものの、長打も2本飛ばし、抱えていたプレッシャーに打ち勝つことができた。
「どうするんだ?」。岩井隆監督から進路について聞かれたのは、昨年のシーズンが終わり、オフ期に入ったころだった。石塚が「上でやりたいと思っています」と伝えると「そうか。キャッチボールをこれまで以上にしっかりやっておけ」と、そのときは短いやり取りで終わった。だが2人だけの面談では「厳しくするよ。チームのことを考えなければ、選手としての幅が広がらない」と告げられたという。
岩井監督は2015年
西武4位指名の
愛斗(武田愛斗、現
ロッテ)から22年の
藤田大清(日本ハム育成ドラフト1位)まで、高校では史上最長記録となる8年連続でドラフト指名選手を送り出した。
根底にあるのが「高卒でプロに行きたいのなら、最低でも10年、うち半分は一軍のベンチにいないと。華やかな世界にあこがれて数年で戦力外になるのなら、大学に行ったほうがいい」という考えだ。「厳しくする」のは、長くプロにいるための準備である。自ずと要求も高くなる。練習試合で3安打しても当然だと見られる。「プロが高校野球で打席に立てば、10割近く打ちますからね」と岩井監督。もちろん、石塚には長くプロの世界で生きていく覚悟がある。
「入ることではなく、そこで活躍することに意味があると思っています」
侍ジャパンU-18代表候補でもある遊撃手は、プロに向けての英才教育を受けながら、心技を磨いている。
入学当時は体が強くなかったという。すでに体重は80kgあったが・・・
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