現役時代から数々の伝説をつくり上げ、ファイターズ北海道黄金時代の礎を築いた男が、北の大地に指揮官として舞い戻ってから3年目のシーズン。手塩にかけて育て上げてきた「チルドレン」たちの勢いはとどまるところを知らず、2年連続最下位に沈んだチームを着実に押し上げている。指揮官が思い描く「ドラマ」を現実のものにするために――。 写真=高原由佳 ※成績・情報は7月21日現在 「最新作」の2人
着実にチームの成長が結果につながってきた。新庄剛志監督の就任3年目。球団の積極補強という後押しも受けて臨む勝負の年は、開幕から貯金生活が続いた。上位をキープしてクライマックスシリーズ進出争いを繰り広げながら、勝負の後半戦を迎えるチームを見渡せば、数多くの「新庄チルドレン」と言うべき選手たちが台頭してきた。
最新メンバーは
水谷瞬。昨オフに2回目の開催となった現役ドラフトで
ソフトバンクから加入した。プロ入りから昨季までの5年間は一軍出場ゼロ。戦力層の厚いホークスでは埋もれていたロマン砲の実力が未知数だった今年1月、千葉・鎌ケ谷の球団施設に球団首脳が集まる年始のスタッフ会議後の取材対応で、新庄監督は早くもその名前を挙げている。
2月の春季キャンプの話題から「今年は(一軍の名護と二軍の国頭を)行ったり来たりしたい。水谷君とか、ちょっと見てみたい」。水谷は二軍スタートに振り分けられていたが、あえて新戦力の名前を口にした。
新たに加わる選手には、とことんチャンスを与えるのも新庄流だ。2月3日の春季キャンプ最初の紅白戦。水谷を白組の四番で出場させた。「水谷君を『マジか、四番か』と思わせたかった。その精神に耐えられるか、と」。ただでさえ、注目を浴びるチーム初実戦。そこで分かりやすく目につく四番に置いた。期待感を示すと同時に、気持ちの強さもチェック。水谷も「びっくりした。でも、打順で野球をするわけではないので、自分のベストパフォーマンスができるようにと思った」。2打数無安打だったが、翌日は白組の五番に入って逆方向へのアーチを含む2打数2安打1打点、1盗塁1四球としっかり結果を出してみせた。
その試合後には、
万波中正とともに特打に参加させている。「万波君を見たときの印象と結構似ていて、同じように成長してくれたらいいなっていう思いがあった」。身体能力抜群の同学年同士。昨季は25本塁打を放つなど結果を出していた万波とあえて競演させることで、周囲の期待感もあおった。
一方で、冷静にオープン戦期間はほぼ二軍で実戦を積ませ、結果を出してから満を持して4月に一軍へ招集。古巣ソフトバンク相手に一軍デビューを飾らせると、プロ初安打をマーク。一度は再調整を命じたが、二軍で調子を上げたのを確認すると、5月下旬に再昇格。そこから安打を量産した。新庄監督も「成長のスピードが速い選手」と驚くほどで・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン