覇権奪還へ“投打の軸”の台頭は欠かせない。巻き返しを図る男も、その一人だ。焦り、迷い、苦しみ、そして忘れた投球フォーム──。セットアッパーとして連覇を支えながら、今季は故障続きで不本意なシーズンとなったが、そんな日々も決してムダではない。明日への光が差した秋。復調のきっかけをつかんだ右腕の心は晴れている。 取材・構成=鶴田成秀 写真=梅原沙織 ムダにはしない
晴れ晴れとした表情が“巻き返し”への手応えをにじませる。春季キャンプで故障しながら開幕に間に合わせるも、不振で離脱し、再昇格後に再び故障と苦しんだ今シーズン。昨季は53試合に登板してブルペンを支え、胴上げ投手となった右腕が、今季は7試合登板にとどまった。来季は復活の1年へ──。失った感覚を高知キャンプで取り戻し、決意を新たに進む。苦闘の日々こそ、来季への活力だ。 ──今季は故障離脱もあり、悔しいシーズンとなりましたが、気持ちも新たに新シーズンを見据えていると思います。
山崎 今年は本当に、歯がゆいと言うか、ふがいない1年でしたから。スタート(開幕)から状態が良くなくて。何とか抑えていた感じだったんですけど。スピードという面でも、物足りなさもあって。それは、コーチ陣や監督も感じていたと思うんです。だから一端、登板機会を与えやすいファームで調整という判断になったんだ、と。『もう一回戻ってこいよ』という話で、ファームで16試合くらい投げさせてもらい、やっと状態が上がってきたんですけどね。
──5月に一軍に復帰も、わずか3試合で再び故障離脱となりました。
山崎 またファームに戻ってしまったので、歯がゆくて、ふがいなくて。本当に悔しいシーズンだったんです。
──振り返れば、春季キャンプで下半身のコンディション不良に。それでも開幕には間に合わせたのは……。
山崎 一軍でシーズン完走を目標にしていたので。その目標が最初の段階で消えるのがイヤだったんです。だから、何とか開幕には間に合わせたかった。一軍の開幕前にファームの試合が始まり、そこで投げて感覚は悪くなかったので、開幕には間に合ったんですけど……。
──『スピードに物足りなさを感じた』のは、調整を急いだことも関係が?
山崎 いや、それが原因ではないと思うんです。じゃあ何が原因かと聞かれると、ずっと分からなかった。でも、5月にファームに降りたときに状態が上がらず、感じたんですよね。体が重いなって。ケガをしてから3週間、練習できなくて、ずっと治療していたので、シンプルに筋力も落ちていたのもあるんですけど。体の重さというか、鈍さがあって。まあでも、ウエート・トレーニングを再開して筋力を上げて体重が増えても、体の重さ、鈍さが取れなくて。筋力が元に戻り、瞬発系のトレーニングの数値も悪くないのに……。変わったことと言えば、ケガをしたこと、あとは体重だけだったんですけど。
──となると、体重の増減から、感覚が狂ったのでしょうか。
山崎 かもしれません。一気に体重を上げ過ぎたのかなって。92kgまで落ちた体重を、97、98kgまで戻したので。重いから悪いわけじゃないんですけど、短い期間に5kg以上も増量したのが、体が重いと感じた要因なのかなとも思うんです。筋力だけじゃなくて、体脂肪率も上がって。あんまり体重が増えない体質だったので、増えたことにうれしさも覚えていたんですけど、それでも投げると体の重さ、鈍さが取れなくて。こう思って動いているはずなんだけど、そのイメージに体が追いついていない感じだったんです。
──初めての感覚でしょうか。
山崎 初めてです。だから分かったんですよ。単純に体重を増やせばいいわけではないんだって。増やすにしても・・・
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