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2025球場特集 ボールパークの未来

<SPECIAL INTERVIEW>斎藤佑樹(元日本ハム)インタビュー 野球普及・振興と球場への愛着「野球が社会を豊かにすることを望んでいます」

 

2021年の現役引退後、元プロ野球選手として、何ができるのかを考えてきた。さまざまな活動を展開している中で、具体的な「恩返し」として立ち上げたのが「野球場プロジェクト」だった。自身の現役時代を含め、スタジアムへの思いを語る。
取材・構成=岡本朋祐 写真=高原由佳

軟式ボールを手にポーズを取る斎藤氏。プロのユニフォームを脱いでから4年、多方面で精力的な活動を展開している


アメリカで見た衝撃


 斎藤氏が手掛けた「はらっぱスタジアム」。5月5日にスターティングイベントが行われ、恩師である栗山英樹氏(日本ハムCBO)がスペシャルゲストで登場した。植樹、始球式、モニュメント披露、記念試合、外野フェンスのペンキ塗り、青空ランチ、イルミネーション点灯式と、盛りだくさんの内容。澄み切った青空、北の大地を満喫できる場所である。

──5月5日を選んだ理由はありますか。

斎藤 「こどもの日」にプレオープンしたかったんです。子どもたちの専用サイズの野球場ということでつくりましたので、分かりやすい日が良いかな、と。北海道も気持ちの良い季節になってきましたので、ここで早く野球をやってほしかった。雪解けしてから、子どもたちが野球をする姿を思い浮かべながら、急ピッチで仕上げ、何とかここに間に合わせました。数十年前までは野球場(舞鶴スポーツ公園跡地)であり、着工当初はその面影はなく、雑草抜きからスタート。長沼町の隣町・栗山さんの「栗の樹ファーム」を参考にさせていただき、土地探しから、さまざまな場面で助言をいただいたからこそ、昨年8月末からスピード感を持って進めることができました。子どもたちが元気よく野球をする姿を見て、感慨深いものがありました。これからも野球場づくりは続きます。これまでもそうだったように、僕一人ではできません。長沼町をはじめ、地域の皆さんのご協力をいただきながら、進めていくことになります。この土地のことをよく知る方からの助言に耳を傾ければ、間違いなく良い野球場ができると確信しています。

──プロジェクトにあたり国内外で約50カ所の野球場、また、候補地の土地も約50カ所を回ったそうですね。最終的に北海道とした決め手は何ですか。

斎藤 現役時代にお世話になりましたので、いつかは北海道にご縁をつくりたいと思っていました。最終候補地に絞った(出身の)群馬に加え、千葉、埼玉、神奈川で、たどり着いたのは北海道夕張郡長沼町でした。形状としては、平らであったことが大きかったです。過去に野球場だった場所であり、建設費を含めて、一番のポイントでした。エスコンフィールドHOKKAIDOが見える場所でもあるので、運命的なものを感じたんです。この野球場でプレーした子どもたちが、あそこを見て、目標とし、いつかプロ野球選手としてプレーしてくれればいいですね。

──現役引退後にアメリカ・ウイリアムズポートで観戦した、リトルリーグのワールド・シリーズ決勝が印象的だったそうですね。

斎藤 約3万人の大観衆の中で、最後はサヨナラ本塁打で試合が決まりました。言葉には表現できないほどの興奮。あのムードを日本にも持ってきたい。それが野球場プロジェクトのきっかけでした。

──斎藤さんがことあるごとに「サク越えの本塁打」にこだわる理由は何ですか。

斎藤 野球をプレーしていて思ったのは、打者は本塁打、投手は奪三振シーンが最も場内が盛り上がると思っています。子どものころの本塁打はすべて、ランニングホームラン。河川敷、校庭が試合会場でしたので……。ランニング本塁打は周りから「回れ! 走れ!」と急かされるじゃないですか。打った本人だけでなく、親御さん、チームメートも含めて、安心感を持って、ダイヤモンド1周の喜びを堪能してほしいと考えました。ここでフェンスオーバーの感覚を味わえば、その先の野球選手の感覚も違ってくる、と。『はらっぱスタジアム』と命名したのも、このロケーションの通り、ノビノビと野球をやってほしいな、と。勝ち負けは関係なく、与えられている役割も関係なく、オーバーフェンスのホームランの体験をしてほしいという願いが込められています。

──実現までは大変だったと思います。

斎藤 「野球界に恩返し」と言いますが、現実は難しい。斎藤佑樹だからこそできる恩返しとは何か。日々模索した中で、その一つが野球場をつくることでした。人と人とのつながりを大切にし、大会も誘致できたら面白い展開になると思います。継続的に運営していくためにも、ビジネス的なことも考えないといけないフェーズになる。エスコンフィールドHOKKAIDOのように、野球とは別の魅力を提供していくことも大事でホテル、カフェ、トレーニングジム……。構想は練っていますが、実際に手を動かすと・・・

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