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2025バット特集 バット今昔物語

国産木製バットの新たな可能性 「ダケカンバ」から始まる北海道産への再注目

 

新たな国産の木製バットとして「ダケカンバ」のバットがにわかに注目を浴びだした。高校生にも木製バットの需要が高まっている中、国産木製バットの復権はあるのだろうか。北海道北広島市を拠点とし、ダケカンバの魚雷バットを作っている「一般社団法人日本野球の杜」の取り組みから、国産木製バットの未来を探る。
取材・文・写真=佐野知香

日本野球の杜のダケカンバ魚雷バット。公式ショップで購入が可能だ


国産の新たな選択肢


 アオダモの木が枯渇して以降、木製バットの主流はメープル、イエローバーチ、ホワイトアッシュ、ヒッコリーといった北米産や中国産の輸入木材に取って変わられていった。しかし、そうした中でも、国産の木製バットを作るための活動は続けられてきた。そして今、新たな木材として注目されているのが、アオダモと同じく北海道産の「ダケカンバ(岳樺)」である。寒冷地の高山に生息し、同じカバノキ科の白樺に比べ寿命が長いという特徴がある木だ。

 北海道総合研究機構林産試験場は京大、北大とともにダケカンバ産バットの研究を進め、従来使われている木製バットと変わらない性能を持っていることを明らかにした。現在NPBではダケカンバ材のバットの使用は認められていないが、軽く頑丈な性質は学生野球に適しており、ゼット、ローリングスといった大手メーカーもダケカンバのバットを発売している。

 日本ハムの本拠地・北広島市に拠点を置く「一般社団法人日本野球の杜」も、折れたバットのアップサイクルや使わなくなった用具を回収、補修し国内外の子どもたちに提供する事業とともに、ダケカンバの魚雷バットを制作、販売を行っている。代表理事である柴垣資治氏はダケカンバについて次のように語る。

「ダケカンバはアオダモより硬くメープルより柔らかい。大谷翔平選手はさらに硬いハードメープルを使っていますが、メープルは力がないと飛ばせない。メープルより柔らかく、シナがあるダケカンバは日本人に適していると思います。新たなバットに変えるのは二の足を踏むものですが、『魚雷バットであれば試してみたい』と、魚雷バットの普及がダケカンバのバットを手に取っていただくきっかけになっています」

 実際に興味を抱いた札幌南高、北海学園札幌高、早大、ウイン北広島といったチームにダケカンバの魚雷バットを提供、好評を得ている。

きっかけは折れたバット


 柴垣氏は元々、大阪で企業のノベルティの企画、製造、販売などを行う企業を経営していた。野球との深いつながりができたのは2023年。三男・敬太朗さんが早大野球部の主務に就任したのをきっかけに練習を見に行くようになると、折れたバットが目についた。

「折れたバットをどうするのか聞いたら、『捨てています』と。息子からもどうにかできないかと相談を受け、折れたバットを使って野球部のオフィシャルグッズを作ることを提案させていただき、ユニフォーム型のキーホルダーを作りました。ファンにとっては選手が使っていたものを手にするのはうれしいものですし、それが野球部の支援金にもつながる。このアップサイクルを早稲田大学さんが気に入ってくださり、野球部以外の体育学部が早慶戦で勝利した際のギフトや、海外交流での手土産となるグッズも、折れたバットで作成することになりました」

 SDGsを理念に掲げる企業もこの取り組みに共鳴し、WBCスポンサー企業や社会人チームを有する企業のグッズ作成も請け負うこととなった。その収益の一部はバットの森づくりの支援金に活用。折れたバットが、企業やファンのサポートを経て、再びバットとして生まれ変わる循環が生まれた。

 一方・・・

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