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2025バット特集 バット今昔物語

<CLOSE-UP>大谷翔平がバットに求めるもの「心地よくスイングできるかどうかが一番大事」

 

年齢を重ねるごとに進化し、すごみを増していく大谷翔平[ドジャース]。バット選びは理想の打撃スタイルを確立するためにも重要だ[写真=Getty Images]


 ドジャースの大谷翔平は今や歴史に残る強打者としてMLBに君臨している。遂げてきた飛躍に合わせるように、商売道具のバットの形状や質感も少しずつ変えてきた。現在への礎を築いていったバットの変遷を追った。

 新型コロナ禍による短縮の60試合制だったとはいえ、エンゼルス時代の2020年はシーズン7本塁打に終わった。翌年、大谷は当時契約していたアシックス社製のバットの素材を、しなやかさのあるアオダモから硬さがあって球をはじきやすいバーチに変えた。日米両方でも珍しい素材でつくられた相棒が、新たな境地を切り開いた。惜しくも本塁打王こそ逃したが、ア・リーグ3位の46本塁打をマーク。翌22年も重さ905グラム、長さ33.5インチの形状を維持して34本塁打を放った。

 23年からはアーロン・ジャッジ(ヤンキース)らも愛用する米チャンドラー社と契約した。新たな武器について、同年2月のキャンプで「打感は硬めの感じかなと思う。形状とかも多少は変わっている。あまり口では説明しづらいが、微妙な違いはある」と練習で感じた変化を口にした。ただ、何よりも大切にしていたのが自分の感覚だ。「振りやすいようになっている。自分により振りやすいように変化させた感じ。振りやすさが飛距離にもなるし、アベレージにももちろん関わってくる。一番は心地よくスイングできるかどうか、が一番大事」と語った。

 言葉どおり、さらに磨かれた感覚で春先から猛打を振るった。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では打率.435、1本塁打、8打点と打ちまくる。シーズンに入っても勢いは止まらず、6月には日本選手で最多記録となる月間15本塁打をマークしてア・リーグの野手部門で月間MVPを獲得。7月以降も9月に故障で出場できなくなるまでコンスタントにアーチを放ち、最終的にシーズン44本塁打で日本勢初の本塁打王に輝いた。

 ドジャース移籍1年目の昨季には自己最多の54本塁打を放って2年連続の本塁打王になった。3年連続の栄冠を目指す今季は長さを試行錯誤。キャンプや日本での開幕戦で35インチ(88.9センチ)とノックバットに近い長さのバットを打席で使用し、「もっといい打撃を求める中で、こっちのほうがいいんじゃないかなと思ったときは変えるし、短いほうがいいと思ったらすぐにそれに対応していけたらいい」とさらなる進化を求めていると説明した。

 ただ、新しければ何でもいいというわけではない。今季序盤、ヤンキースの選手たちがアーチを量産したことで芯付近が最も太い形状の「魚雷バット」が話題沸騰となったが、その際には目もくれなかった。

「いきなり使うことはもちろんないと思う。最初から可能性を排除することもないと思うが、今のバットで十分満足している。いいフィーリングが(感触として)かえってきているので、今のところは継続して今のバットを使うと思う」。自分の原点、基盤を大事にしながら究極の打撃スタイル確立を目指している。
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