現役最多、歴代12位の2426安打を重ねてきた、史上屈指のバットマンがもがき苦しんだ。通算3000安打を期待されながら、二軍で試行錯誤を繰り返した悩める背番号6。それでも飽くなき向上心とプライドは失われていない。ようやく開けた視界。逆襲はここからだ。 文=北川修斗 写真=中島奈津子、BBM
※記録・情報は6月15日現在、年齢は2025年の満年齢 逆襲を誓った19年目
現役選手で誰よりもヒットを打ってきた男。数々の記録を打ち立ててきても、坂本勇人の野球に対する思いは変わらない。常にうまくなりたい一心で、目の前の練習に取り組んでいる。
「記録のために頑張ろうとかいうのはないかな。明日は今日よりもっとヒットを打ちたいとか、いいパフォーマンスができるようにとか、そこに向けてのモチベーションはあるけど、記録どうこうはない。毎日、もっと良くなりたい、もっとヒットを打ちたいとかはある。それに向けてやっているだけ」 現役最多、歴代でも12位の2426本の安打を放ってきた。2000安打は右打者では史上最年少の31歳10カ月で到達。32歳9カ月で400二塁打到達も最年少だ。2023年5月31日には、史上初となる遊撃での2000試合出場を達成した。球界屈指のバットマンには常に記録がついて回る。当然、周囲は史上2人目となる3000安打への期待を抱く。それでも、いつも口にする言葉は決まって
「1試合1試合、継続してやるだけ」だった。
そんな男が、もがき苦しんでいる。18年目の昨季は、2年目のレギュラー定着以降で自己ワーストとなる打率.238。優勝争いが激しさを増した9月22日の
阪神戦(甲子園)では3度の得点圏ですべて凡退して0対1で敗れ、
「野球人生の中でもなかなかあそこまで悔しい思いはしたことがない。情けないなと思いながら一日を過ごした」と言った。
翌日の同戦ではスタメンを外れるも、0対0の7回無死一、三塁、五番・
大城卓三の代打で登場。難敵・
高橋遥人に追い込まれながらもノーステップで対応し、雪辱を果たした。この一戦で優勝マジックが4になり、4年ぶりのリーグ制覇へ加速。優勝後のインタビューでは
「本当に野球の神様が僕に試練を与えてくれてるなと。ここで打たないと引退しないといけないのかなと、それぐらい追い込んだ中で立った打席」と明かすほど、苦しんでいた。
「なかなかこんなにうまくいかないことって、あまりなかったので、すごく考えさせられたシーズンでした。もう一度、もっと野球がうまくなれるように。人にも野球がうまいなと思ってもらえるように頑張ります」 逆襲を誓った19年目がスタート。自主トレでは胸郭や背骨の動き出しを意識したトレーニングを導入した。通常のウエート・トレーニングだけでなく、体の動きをより意識してのトレーニングだ。これだけ実績を残してきても、まだ考え方や意識から改善に取り組む姿勢。背番号6の自主トレに初めて参加した
萩尾匡也が「野球に対して本当に24時間考えている。自分にまだまだ足りなかったところ。食事も睡眠もケアも意識高く、これだけ意識しないと長く野球界に残っていけないのかなと思った」と言えば、同じく初めて合同自主トレを行ったオイシックス・
陽岱鋼も「誰から見てもすごい選手だし、練習を一緒にしていても謙虚な人だし、いろいろ聞いてくれたりとか、何を質問してもすごくちゃんと答えてくれる。すごく勉強になった」と、ともに過ごした日々を振り返った。
2度目の再調整
1月28日から始まった宮崎合同自主トレ。誰よりも先にグラウンドに姿を現したのが・・・
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